著者:Cormac McCarthy
ペーパーバック:287 pages (キンドル版あり)
出版社: Knopf
出版日:2006年9月
文芸小説/SF/終末期
人類のみならず地球上の生物と植物がほぼ全滅した世界で、名もなき男とその幼い息子は南へ向かって歩みを進める。道中の家や店で食料品を漁るが、たいていは、すでに他の者の手で盗み尽くされている。人肉を喰うようになった者からの襲撃に怯え、飢えと凍えに生きる意志を奪われそうになる日々のくり返しだが、父は息子を励ましつつ、歩みを続ける。
Cormac McCarthyの作品は、いずれも人間の暗闇をストレートに描くことでは容赦がない。その中でも特にThe Roadは残酷な作品だ。終末期もののSFやファンタジー小説ではなんらかの救いが用意されているが、The Roadの地球には、論理的に希望の可能性がない。徹底的に暗い作品だが、絶望の中の光のようなものも感じさせてくれるのである。
2009年に映画化されているが、映画は観ずに本だけを読むことをおすすめする。私はトレーラーを観ただけだが、本書に潜んでいる静かな美しさが欠けていて、イメージが壊されると思った。
●読みやすさ 普通〜やや読みやすい
MacCarthyの文章はシンプルである。シンプルだが、シャープで詩的なのだ。そこが彼の作家として非常に優れたところである。
口数が少ない父と息子の会話も、日本人読者には分かりやすいだろう。そして、それをくり返し読むうちに、ふたりが口にしない部分に込められた意味に気づいてゆくことだろう。
ページ数も少なめなので、文芸小説の中では読了しやすいほうだと思う。
●おすすめの年齢層 中学生以上
カニバリズムのテーマや死体の描写など悪夢を見そうなシーンがあるので、繊細な人や、子どもにはおすすめできない。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。