Harper Leeと言えば、誰もが知る『To Kill a Mockingbird』の作者である。
この名作の後は一作も書かず、ずっとスポットライトを避けてきた有名な「隠匿者」である。
そのLeeの「新作」が今年7月に発売されることが発表され、いきなりAmazonのベストセラー1位になるほど期待を集めた。
「新作」と書いたが、実は新作ではない。また、To Kill a Mockingbirdの「続編」とよく説明されているが、『Go Set a Watchman』はそれよりも前に書かれたものだ。
「続編」と説明されているのは、主人公が大人になったScout Finchだからだ。Go Set a Watchmanでは、彼女が直面している個人的な問題や政治の問題について父のAtticusの意見を聴くためにニューヨークからアラバマを訪問する、という筋書きらしい。
この作品を読んだ編集者が、「幼いScoutの見解で、別の作品を書いたらどうか?」と提案し、それでできたのがTo Kill a Mockingbirdらしい。Go Set a Watchmanの原稿はその後失われたと思われていたが、2014年にLeeの弁護士が発見し、訂正を入れずオリジナルのままで刊行されることになった。真相は不明だが、そう説明されている。
だが、「もう作品は書かない。刊行しない」というスタンスを保ってきたHarper Leeと、彼女を守ってきた姉で弁護士のAlice Leeを知るメディアはこの展開に懐疑心を抱いている。
しかも、この「原稿発見」と「新刊の発売の決定」は、Harperが脳卒中を起こして視覚と聴覚に障害を持ち、姉のAliceが健康上の問題で新しい弁護士に仕事を引き継いでからのことである。
「今回の『続編』の刊行は、本当にHarper Leeの望むことなのか?」という疑問が生まれて当然だ。
Washington Postの記事でも、周囲の関係者が回答を避けている様子が見える。
本当にHarper Lee本人が望んで刊行された作品ならいいが、そうでないのなら、私は読まずにおこうと思うのである。
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