編集者:Paul Show
ハードカバー: 270ページ
出版社: The MIT Press
ISBN-10: 0262029014
発売日: 2015/1/30
適正年齢:PG(何歳でもOK)
難易度:上級レベル(大学受験英語に慣れている人なら小説より読みやすいだろう)
ジャンル:学術書/専門書
キーワード:Trajan、フォント、書体
欧文フォントの王様と言われるヘルベチカが誕生から50周年を迎えて注目を集めたが、実は世界にはもっともっと古い書体がある。
それは、2000年の歴史を持つTrajan大文字である。
その歴史の中でもっとも重要なのがルネッサンス期と20世紀である。現在使われているのは、Adobeの書体デザイナーCarol Twomblyが1989年にデザインした「Adobe Trajan」だが、それより前の1930年代この文字を徹底的に研究したカトリックの神父がいた。本書は、そのEdward M. Catichの神父のエッセイを含め、実績を詳しく紹介している。そこもとても興味深かった。
また、19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した、(だが私生活では性的虐待の加害者として悪名高い)版画家で活字体デザイナーのEric Gillの貢献についてもビジュアルを含めて紹介されている。
そういった歴史に加え、Trajan書体のグラフィック面での分析、ロシア語でのTrajan書体の影響、現代の書体に関するエッセイなど、書体おたくはもちろん、それ以外の人も「なるほど!」とはまりこむ内容である。
多くの編集者が関わっているために、読みやすい文章とそうでないものがある。ただ、すべてストレートな英語なので、受験英語に慣れている人にとっては小説よりも読みやすいかもしれない。
次のようなビジュアルが多いので、英文をさほど読まなくても理解はしやすいと思う。
作成したのは書体の(陰の)世界では有名な人たちだ。彼らが「これほど包括的な本はない」と言っているので、デザインやフォントを教える大学、会社、そして図書館は本書を所蔵するべきだろう。
*このページで公開している写真は、すべてこのブログ記事のためにMIT Pressから提供を受けたものです。無断で転用されないようお願いします。
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