著者:Randall Munroe
ハードカバー: 320ページ
出版社: Houghton Mifflin Harcourt
ISBN-10: 0544272994
発売日: 2014/9/2
適正年齡:PG(何歳でも読めることができればOK)
難易度:中級(日本で英語を学んだ人には一番読みやすいタイプの文章)
ジャンル:ノンフィクション(科学)/ユーモア/漫画(イラスト)
キーワード:Hypothetical Questions
私は、小型の飛行機に乗る時に反対側に体格が大きなアメリカ人が座ると、「あっちに傾いてバランスがとれなくて危ないんじゃないか。誰か重そうな人を私の前に乗せてくれ」と不安になる。バスや船で窓の外にある何かを見るために乗客がひとつのサイドに押し寄せると、外を見るよりも「バランスを取るために反対側に行かなくては」と焦ってしまう。
そういった不安には根拠があるけれども、それを延長させていった「地球上の人類が一箇所に集まったらどうなるんだろう? 地球の回転速度が変わっちゃうんじゃないかな? 」というのはありえない疑問である。
けれども、考え始めたら気になるものである。
そのありえない仮説の「もしこうなったら、どうなるだろう?」という質問に、大真面目に科学的に答えるのがこの本「What If」である。
(実際に、地球上の人類がいっせいにジャンプして着地したらどうなるのか?」という質問もあった。)
Munroeが受け取る質問の数々はオタク的だが、彼自身もそんな感じで、私の近所とも言えるマサチューセッツ州ケンブリッジに住んでいるようだけれど、姿を見かけるのはまず諦めたほうがいいようだ。
質問のサンプルはこんな感じだ。
If an asteroid was very small but supermassive, could you really live on it like the Little Prince?
でも、回答は私たち一般読者が想像するようなストレートなものではない。
MunroeはまずLittle Prince(星の王子さま)の内容と書かれた時代に触れ、それからこのように書いている。
There's no point in trying to critique the science here, because (1) it's not a story about asteroids, and (2) it opens with a parable about how foolish adults are for looking at everything too literally.
けれど、ここで終わらないのがMunroeである。その質問をさらに拡大していって、
"If there really were a superdense asteroid with enough surface gravity to walk around on ,it would have some pretty remarkable properties."
と、さらにトンデモ方向を進めるのである。
"If you stood on the surface, you'd experience tidal forces. Your feet would feel heavier than your head, which you'd feel as a gentle stretching sensation. It would feel like you were streatched out on a curved rubber ball, or were lying on a merry-go-round with your head near the center."
そして次にescape velocityの奇妙さについての話に続く。
くだらない質問についてのMunroeの答えは、トワイライトゾーンである。
読者は予期しない場所に連れて行かれて頭がクラクラしてくる。真面目なのかジョークなのかわからないデッドパンな解説に、つい噴出す。
それが快感になのだ。だから、こんなに人気があるのだろう。
数学的な部分は私にはよくわからないが、それでも楽しく読める。
日本で英語を学んだ人にとっては最も理解しやすいタイプの英語だし、質問ひとつを読み切ることで満足感も得られる。小説が苦手だけれども洋書をトライしたい人におすすめである。
それに、クリスマスプレゼントにいいかもしれない。私はこれを中学生の甥に買うことに決めた。
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