著者:David Nicholls
ハードカバー: 416ページ
出版社: Harper
ISBN-10: 0062365584
発売日: 2014/10/28
適正年齡:PG15(高校生以上。露骨ではないが、性的なシチュエーションあり)
難易度:中〜上級(大人向けの小説としては、ストレートで読みやすい文章)
ジャンル:大衆小説
キーワード:中年夫婦/夫婦の危機/家族関係/親子問題/愛情/セカンドチャンス/家族旅行
賞:ブッカー賞候補(ロングリスト)
英国ロンドン近郊に住むPetersen夫妻は、知り合ってから25年、結婚してから20年経つ。夫のDouglasは、生化学専門の科学者で、若いころあまりモテる方ではなかった。だから、美しくて奔放なConnieと出会い、結婚することができたのを奇跡的だと思って感謝している。今でも妻を愛しているし、このまま死ぬまで一緒だと思い込んでいたのだが、ある日それが自分だけの思い込みだったことを知る。
Connieのほうは、ひとり息子のAlbieが大学に行って家を離れたら新しい人生を始めたいと考えていたのだ。
Albieが大学に進学する前に、三人でヨーロッパ大陸を一緒に旅行しようというのだ。「三人で旅行するのは、これが最後かもしれないから」と。
17歳のAlbieは、科学者のDouglasよりアーティストのConnieに似ている。母親とは親しい関係を保っているが、父親とは険悪な仲だ。Douglasは、ConnieとAlbieを失わないために、ヨーロッパ旅行を素晴らしいものにしようと決意する。だが、その努力が次々と裏目に出てしまい、途中でAlbieは両親を置き去りにして姿を消してしまう。Connieは失望して英国に戻ったが、Douglasは息子を探しだして謝るためにヨーロッパに残って走り回る。
David Nichollsは、映画化もされたヒット作『One Day』の著者である。
前回の作品では、相手の欠陥を何でも許して受け入れてやるEmmaに、女性読者として「こんなのありか?」という不満を覚えたところがある。
だが、今回の作品には夫婦の心のすれ違いにリアリティがあった。不協和音があってもわざと見えないでいるDouglasと、たぶん彼にぞっこんではなかったけれど、人生でうまくいっていない時に救ってもらったことに感謝しているConnieの微妙な愛情は、小説としては説得力に欠けるかもしれないが、現実にはけっこう存在するかもしれない。
クスクス笑えるところはけっこうあるし、ぐっと胸にくる場面もある。この小説に出てくる夫婦と同じ年代なもので、ノスタルジックな気分も楽しめた。
それでもやはり、Nichollsの描く「愛」には違和感を感じずにはいられない。私と同じくらいの歳で、同じような悩みを抱いた筈のConnieがまったく理解できない。「いや、現実ならそれはしないだろう」とツッコミたくなる。これは、私のせいなのか?それとも著者がいまいち女性の気持ちを理解していないからなのか?
著者は「希望が抱けるエンディング」を書いたつもりだと思うのだが、すごくモヤモヤしている。
この「モヤモヤ」は、読んだ人としか話し合えないので、誰か読んでみてください。
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