著者:Celeste Ng
ハードカバー: 304ページ
出版社: Penguin Press HC
ISBN-10: 159420571X
発売日: 2014/6/26
適正年齡:PG12(性の話題はあるが、露骨な表現ではない)
難易度:上級(ネイティブが普通に読むレベル)
ジャンル:スリラー/文芸小説(家族ドラマ)
キーワード:人種差別、男女差別、親の期待、プレッシャー、家族問題
1977年、アメリカ合衆国オハイオ州の田舎町で16歳の少女が行方不明になり、数日後に湖で死体でみつかる。
中国系アメリカ人の父Jamesと南部出身の白人の母Marylinの間に生まれたLydia Leeは、黒髪なのに青い目を持ち、三人兄妹の中で両親の一番のお気に入りだった。
Marylinは誘拐殺人だと信じてLydiaが残したものからヒントを探そうとする。そして、親には言えない秘密の数々を知る兄のNathanは、悪評高い近所の同級生Jackに疑いを抱く。
しかし、親の期待をまったく受けず、いつも存在を忘れられている末っ子のHannahだけが、ずいぶん前から起こっている崩壊に気づいていた。
「女の役割は、よい主婦になること」という価値観を押し付けられて苦しんだMarylinは、医師になる夢を持っていたのに、学者のJamesと出会って結婚し、その夢を捨てた。
父のJamesは、アジア系であるために差別されて孤独だった自分のような人生を子どもたちには送らないで欲しいと願っている。
でも、オハイオ州の田舎町では青い目のハーフであってもLydiaは「中国人」なのである。町で唯一のアジア人の兄妹と遊びたい者はいない。
そんなことにも気付かない母は「女医になりたい」という夢を、父は「友人を作って人気者になってくれ」という夢を娘のLydiaに押し付けてきた。それが親の愛だと信じて......。
少女の死とその謎が中心にあるが、この小説はどちらかというとスリラーではなく「家族ドラマ」である。
「周囲から異質だとみなされること」の辛さや、両親から期待を押し付けられることの重苦しさがリアルに描かれており、拙著『どうせなら、楽しく生きよう 』で取り上げたテーマが沢山入っている。
人種差別のことだけでなく、親子関係のことについても問題定義して語り合える本なので、読書会にはぴったりの本だろう。
唯一残念だったのは、人物造形である。Marylinがあまりにもアジア系の母親っぽすぎるのだ。たぶんそれは、著者の育った環境が影響しているのだろう。また、全体的に登場人物が自己中心的すぎるのは気になった。
デビュー作だが読者の人気は高く、AmazonやGoodreadsでは今年のトップ作品のひとつに選ばれている。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。