著者:Fredrik Backman
ペーパーバック: 304ページ
出版社: Sceptre
ISBN-10: 1444775804
発売日: 2014/7/3
オリジナル言語:スウェーデン語
適正年齡:PG(どの年齡でも問題はないが、対象は中学生以上)
難易度:中級レベル(分からない単語がたまに出てくるだろうが、文章は非常にシンプル)
ジャンル:人情ドラマ、ユーモア
キーワード:加齢、孤独、不機嫌じいさん、コミュニティ、家族、ふれあい
共同住宅地の監視役を自ら任命している59歳のOveは、他人の生き方が気に入らなくてたまらない。車の乗り入れ禁止だと書いてあるのに平気で乗り入れるし、禁止の標識がある場所に自転車を駐輪する。
Saabという素晴らしいスウェーデンの車があるというのに、ドイツ車や日本車なんかを運転する気取った奴らばかりで、iPadとやらいうコンピュータは、あんなに高いのにキーボードすらついていないのだ!いったい、この世の中はどうなってしまったのか?
ひょろひょろした夫のほうは車の運転の仕方すらしらないボンクラだし、妊娠中の妻のほうは外国人だというのが明らかだ。そのうえ、3歳と7歳の娘までいる。静かだったOveの世界は、この迷惑な一家のおかげでどんどん変わっていく。
スウェーデンでベストセラーになり、今年英語で翻訳出版された作品である。
最初のうちは、「なんだ、スウェーデン版”Grumpy Old Men”か」とユーモア本のつもりで読んでいた。ところが途中で、びっくり。これ以上書くとネタバレになるので書かないが、この意外さと、人間性を信じる優しさが素敵な小説だった。
日本人の多くは「スウェーデンは福祉王国」と羨ましがっているが、本書を読むと、それなりに国民の不満はあるのだと感じる。米国では「日本の医療制度は素晴らしい」という専門家もいるし、いずこも「隣の芝生は青い」と思っているのだろう。物語の本質には無関係だが、そういうスウェーデンの事情がわかるのも面白かった。
シリアスな文芸小説ファンは「ちょっと甘すぎる」と思うかもしれないが、読みやすいし、人間関係に疲れている人には「人付き合いも悪くないな」と思わせてくれるので、お薦めである。
翻訳もよくて、とてもスムーズに読める。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。