著者:Daniel Suarez
ハードカバー: 416ページ
出版社: Dutton
ISBN-10: 0525953183
発売日: 2014/2/20(予定)
適正年齢:PG13+(中学生以上、だがバイオレンスシーンあり)
難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル。分からない単語は多いかもしれないが、解釈の必要がないシンプルで短い文章)
ジャンル:テクノスリラー/SF
キーワード:防衛機関、テロ、テクノロジーの発達と人類の存続
世界を変えるような発見は、巨大な企業や有名大学のラボでは起こらない。世間から落ちこぼれとみなされているような個人が、廃品や借り物を利用してガレージや地下室に作った仕事場で生まれるものなのだ。マイクロソフトもアップルもそうだった。規定の環境に順応できるような者には、これまで誰も想像できなかったような発明はできないものである。物理学者のJon Gradyには数字が色で見えるsynesthesia(共感覚)があり、世界の把握も通常の人とは異なる。環境に適応できないGradyは在宅教育ですべてを学び、大学も中退していた。その彼が小さなラボでついに発明したのが、重力を反射(mirror)する技術だった。
だが、その成功を祝っているときに神の教えに背く科学を否定する宗教テログループがラボに侵入し、全員を拉致し処刑した。テログループの首謀者Cottonはその状況をビデオに撮って世界に宣告するが、実はそれは「やらせ」だった。
Jon Gradyが開発した重力反射技術が普及すると地球上の人類は近い将来壊滅状態になる。BTCはそのシナリオをGradyに見せて協力するように求めたが、Gradyはそれを拒否したために脱出不可能な牢獄に閉じ込められてしまう。
著者Suarezは情報産業の機密関係のコンサルタント業をしていた人物で、コンピュータ技術や政府の防衛機関の内情にも詳しい。それゆえにフィクションとはいえ内容に説得力がある。処女作Daemonと続編Freedomに出てくるゴーグルは、最近発売されたメガネ型デバイスの「Google glass」を連想させるものである。それを5年前に描いていた著者には脱帽せざるを得ない。
前回の二部作でも「テクノロジーの発達と人類存続」がテーマだったが、新作のInfluxも同様である。小説だから大げさだが、含まれている警鐘は現実的である。
著者は、「マイケル・クライトン (Michael Crichton)の後継者」とよく呼ばれているが、クライトンのように幅広い分野を取り扱う作家ではなく、テクノスリラー専門である。シンプルで日本人には読みやすい文章も、ややクライトンに似ているかもしれない。
Daniel Suarezを初めて本ブログで紹介したのは、ちょうど5年前の2009年1月だった。当時のブログ記事にも書いたが、著者に「これは稀にしか生まれないモンスターだ!」メールを送ったら親しみのある返事が戻ってきた。あのときに「ビッグになる」と思った作家が本当にビッグになったのは、嬉しいものである。
この本も娯楽作品として面白いが、Suarezを知らない人は、できればDaemonとFreedomから入ってほしい。あの2作のほうがすごいので。
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