著者:Sarah Churchwell
ハードカバー: 432ページ
出版社: Penguin Press HC
ISBN-10: 1594204748
発売日: 2014/1/23
適正年齢:PG15(高校生以上)
難易度:上級レベル(難しい単語や表現はあるが、ストレートな英語なので日本人には読みやすいだろう)
ジャンル:ノンフィクション/伝記
キーワード:F.スコット・フィッツジェラルド、ゼルダ、ジャズエイジ、殺人事件、時代考察、『偉大なるギャツビー』
F.スコット・フィッツジェラルドや『グレート・ギャツビー(The Great Gatsby)』に関する本は数え切れないほどある。だから、もう必要ないと思っている人もいるだろうが、来年1月発売のこの新刊は、これまで彼らのことを良く知らなかった人や、学術的な分析には興味がない人など、これまで以上に広い読者層を魅了しそうだ。
禁酒法、密造酒とギャング、成金、ワイルドで危険なパーティ...と、大恐慌が起こる前のジャズエイジはすべてが過剰だった。それらのアクションの中心にいたスコットとゼルダ夫妻はフィクションの主人公のように美しかったらしいが、生き様も小説よりドラマチックだったようだ。彼らのクレイジーな日常と、ニュージャージーで起きた殺人事件のゴシップ的な報道が絡み合い、ジャズエイジの脆さが鮮やかに描かれている。新聞の切り抜きがふんだんに使われているのも嬉しい。
私が個人的に気に入ったのが、この当時に誕生した新しい用語と表現のリストである。
Cool, teenage,mass media,feedback, multi-purpose, Power play, market researchといった現代人が良く使う表現の数々が、1919年から1923年のジャズ時代に生まれたというのはとても興味深い。
ところで、この時代を過剰なまでに謳歌したフィッツジェラルドは、それが続くとは思っていなかった。終焉を小説の中で予言していた彼が、劇的な崩壊の象徴のようになってしまったことに、あらためて諸行無常を感じた。
著者Churchiwellはイギリスの大学の教授だが、本書は学術的ではなく、小説のように読める娯楽的なノンフィクションである。彼女が本書について語っているビデオがあるのでご紹介する。1時間以上あるので全部は観ていないが、イギリス英語でフィッツジェラルドやジャズエイジが語られているのが面白かった。リスニングのレッスンにもなるし、内容の理解を深めることにも役立つので、ご興味がある方はぜひどうぞ。
JohnnyCakeさま
私も最初に読んだときに「なんでこれがクラシックなの?軽薄〜」と思ったのですが、後で読んで、文章の素晴らしさと時代考証としての価値を見出しました。今でも、好きな本かと尋ねられるとNoですw 娘も好きではないけれども文章の卓越さには感心しているそうです。女性で好きな人には会ったことがないので、性差もありそうですね。
ちなみに、私の夫も娘や私と同じ感想です。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2013/12/09 05:32
こ、これは、おもしろそうです!原作は2度読んだのですが、どうもピンとこなくて、映画もレッドフォードのとデカプリオのを見たのですが、それでも何故こんなに原作がもてはやされているのか、いまひとつ腑に落ちなくて。
作品の背景がフィッツジェラルド夫妻そのものに繋がっているとは知りませんでした。これは読んでみたいと思います!
投稿情報: JohnnycakeACT | 2013/12/07 00:01