著者:Graeme Simsion
ハードカバー: 304ページ
出版社: Simon & Schuster
ISBN-10: 1476729085
発売日: 2013/10/1
適正年齢:PG15(高校生以上)、性的な話題はあるが、基本的にプラトニック
難易度:上級レベル、文章はシンプルだが、英語が堪能でないとユーモアが理解できない。
ジャンル:ロマンチックコメディ/現代小説
キーワード:ロマンス、ユーモア、アスペルガー(自閉症スペクトラム)、OCD(強迫性障害)、心温まる本
オーストラリアの大学で遺伝学の準教授を務めるDon Tillmanは、頭脳明晰で、社会的に尊敬される立場にあり、グレゴリー・ペックにに似ていて、合気道や空手の達人で、グルメ料理も作ってしまう。つまり、ペーパー上は「理想の結婚相手」なのだが、なぜか女性から敬遠されている。自閉症スペクトラムの一種だと思われる障害を持つDonは、社会的なシチュエーションを把握できず、女性との対応でもエビデンスベースの論理的なアプローチしかできないからなのだが、本人は肝心な部分で自覚がない。
この計画を援助してくれるのは、Donの数少ない友人のひとりである心理学教授のGeneと彼の妻Claudiaである。GeneとClaudiaの結婚は、いわゆる「open marriage」で、Geneはなるべく多くの国籍の女性と性交渉を持つことをおおっぴらに趣味にしている。
いくつかのデートに失敗したDonにGeneは若くて魅力的な女性Rosieを紹介する。だが、タバコは吸うし、酒は飲むし、約束には徹底的に遅れてきたRosieは、最悪の妻候補だった。失格のカテゴリーに入れて二度と会わないと決めたのだが、なぜか彼女の本当の父親探しを手伝うことになってしまう。馴染んだ居心地良い生活パターンをRosieに乱されるうちに、それを非論理的に楽しんでいる自分に気付き、Donは困惑する。
他人の送るシグナルが読めず、論理的なアプローチで間違った結論に達するDonの思考回路がおかしくて、最初から笑いっぱなしだった。しかし、そういう障害がある人を嘲笑するのではなく、ユーモアのセンスで理解し、受け入れ、最終的には抱きしめて愛さずにはいられなくなる心温まる作品である。
オーストラリアの男性作家Graeme Simsionの処女小説で、男性も女性も楽しめるし、人間の繋がりを信じさせてくれるのもよい。
『ジャンル別 洋書ベスト500』に含めたThe Silver Linings Playbook を連想させるところもあり、どちらの作品も心を暖かくしたい人におすすめの作品。
Sparkyさん、
コメントありがとうございます。
これは、カナダに長距離運転するとき、夫が「面白いオーディオブック探して」と言ったので聞かせたものです。
確かに都合良すぎる展開なんですが、ともかく可笑しくて、温かい気分になれるのがいいですね。
私の場合は、夫が気に入ったのが良かったです。
おかげで旅が短く感じました。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2014/10/13 13:50
いつも過去の記事へのコメントで申し訳ありません。本はたいてい図書館で借りるので、人気のある作品は特にどうしても読むのが遅くなってしまいます。
物語については「ちょっと都合よく行き過ぎ(創作なんだから当たり前だけど)かな」と思うところもありましたが、渡辺さんのおっしゃるとおりユーモアたっぷりで、楽しく読めました。元々映画の脚本としてスタートした作品とのことで、映画もおもしろいものになりそうですね。
本編の後に付録として付いていたDonのWife Projectのアンケートに回答してみたところ、120点満点の60点でした。Donには相手にしてもらえそうにありません(笑)。
投稿情報: Sparky | 2014/10/13 08:30
blancasさま
Temple Grandinさんについては、今でもいろいろな本が出ていますが、サックス先生のあの本で有名になったと思います。そのおかげでいろんな方が当人の視点を知ることになって素晴らしいと思いました。
ハグしてもらうのが嫌というのは、私の甥もそうで、でも大人になってずいぶんましになりました。
暖かい気持ちにさせてくれる大好きな本なので、多くの人に広まると嬉しいです。
ところで映画化が決まったようです。知人と「妄想キャスティング」楽しんでますw
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2014/02/23 05:21
以前、オリバー・サックスの”Anthropologist on Mars”で、Savant症候群についての知見を得ていたので、背景認識が楽でした。(特にTemple Grandin准教授の物語に登場する、Squeeze Machine(Hug Machine)。人との物理的な接触に対する恐怖と、Hugして貰う事の喜びのambivalentな気持ちへの言及、判り易かったです。)
違った視点で物語を語るという違和感が新鮮なだけでなく、ユーモアに包んであるのでシリアスにならずに共感を持って楽しめました。美男/美女ながらこの歳まで縁の無い理由がある主人公たちに加え、彼を支える登場人物の人物造形も秀逸で、優秀な一方とんでもない性癖のGene、彼を実社会に適応させようと暖かく支援するClaudia。大笑いしながら、ほっこり暖かい気持ちになれました。
投稿情報: blancas | 2014/02/23 05:15