私が赤毛のアンに出会ったのは、母が私たち姉妹のために購入してくれた『少年少女世界の名作文学』を通じてのことで、小学校1年か2年生の時でした。このシリーズは小学生向けに簡約されているもので、私が本格的にアンに夢中になったのは、詳しいほうの翻訳作品を読んだ中学生のときでした。中学校の図書館にあったモンゴメリの作品をすべて読み尽くしたのもこのときです。
大人になって英語で読み返したとき、日本語で読んだときには気づかなかったユーモアや感情の複雑さに再び虜になったのですが、舞台のプリンスエドワード島を訪問する機会はこれまでありませんでした。残念に思っていたのですが、夫がカナダのセント・ジョンで講演することになり、私もパネリストで招かれたので、そこから車で3時間の距離のプリンスエドワード島に立ち寄る計画がすんなりと生まれました。
まず訪問したのが、Green Gables Houseです。
作者Lucy Maud Montgomeryがよく遊びに行った従姉の家で、Anne of Green Gablesのモデルになったものです。
これはAnneの部屋。
Lucyの母は彼女が2歳になる前に結核で亡くなり、Lucyはその後母方の祖父母に厳しく育てられたということです。これは、その家があった場所です(現在は私有地なので、訪問料を別に払う必要があります)。
この家と従姉の家の間にある森が、本に登場する "Haunted Woods"のモデルです。秋のオフシーズンで散策中誰にも会わず、さらに雰囲気たっぷりでした。
そしてもちろん、"lovers lane"も。
ここからは車で移動する必要があるのですが、The Anne of Green Gables MuseumはMontgomeryファンならぜひとも訪れたい場所です。Montgomeryが愛した叔父と叔母(Uncle John and Aunt Annie Campbell)の家で、今でもCapmbell家が所有しています。
これは、Lucyが叔父と叔母を訪問するたびに滞在した彼女の部屋です。家具なども当時のまま保存されているようです。
これは、Anne of Green Gablesの8章でAnneが語るenchanted bookcaseです。食器棚として使われている本棚も、Katie Mauriceも、著者自身の体験から生まれたものだったのです!
Campbell家の裏にある湖が、The Lake of Shining Watersです。
この家をこよなく愛したLucyは、ここで結婚式をあげました。そのときに演奏に使われたのが、このオルガンです。
プリンスエドワード島はアクセスしにくい場所にあるのですが、それでも日本人ファンには人気の場所です。私の年齢のアメリカ人女性で『Anne of Green Gables』を読んでいない人はけっこういるのですが、日本人女性で『赤毛のアン』を読んだことがない人には会ったことがありません。また、男性に限って言えば、アメリカよりも日本のほうがファンが多いでしょう。私は当時(テレビを持っていない)大学生だったので観ていないのですが、1979年に始まったテレビの『世界名作劇場』の『赤毛のアン』シリーズの影響があると思います。
でも、こういった日本人ファンとAnne of Green Gablesとの関係は、一方的な片思いではないようです。
ここには、あちこちに、日本での翻訳作品を愛するファンを重視する展示がありました。
カナダのプリンスエドワード島のシーズンは短く、私たちが訪問したときには、島はひっそりとしていました。Green Gables Houseは閉館前の最後の週末で、Lucyの生家は既に閉館していました(特に興味はなかったので問題なし)。それでも、この時期に訪問したのは幸運だったと思います。誰もいない森を散策でき、Lucyが創作したときのことを想像することができたからです。観光客でごった返しているシーズン中だったら、決してできなかったことです。
じっくりと雰囲気を楽しみたい方には、観光客がいなくなったオフシーズンの訪問をおすすめします。島の美しさも、静かなこの季節だからこそ際立ちますから。
ところで、プリンスエドワード島行きを決めたとき、夫は初めて"Anne of Green Gables"を読んだのですが、「これまで女の子向けの児童書かと思っていたけれど、人間観察が素晴らしくて、面白かった!」と感心。彼にとっても味わい深い旅になったようです。
『赤毛のアン』をアニメや翻訳作品で知った人は、ぜひ一度は原書を読んでみてください。これまで気づかなかった素敵な場面に遭遇して、吹き出したり、涙ぐんだりできますよ。
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