著者:Michael Chabon
ペーパーバック704ページ
出版社: Random House
出版日:2000年9月
サブジャンル:風刺/サブカルチャー
2001年ピューリッツアー賞受賞作
プラハの裕福なユダヤ人家庭の長男Josef Kavalierは、音楽、絵画といった芸術に加え、有名なマジシャンの元で手品と脱出マジックのレッスンも受けていた。だが、ナチスドイツの占領でユダヤ人迫害が深刻になり、Josefは恩師の助けを借りて国外へ脱出する。
辿り着いたニューヨークでJosefはいとこのSamuel Klaymanと出会い、Joe Kavalier & Sam Klayというコンビで『Escapist』というスーパーヒーローもののコミックを生み出す。Joeが19歳、Samが17歳のときだった。
(ここからネタバレがあるので、読みたい方のみ、カーソルをあてて読んでください)
Sammyにも思いがけない恋が訪れていた。ラジオ番組でEscapistを演じるTracy Baconと過ごすひとときが、Sammyにかつてないほどの幸福感をもたらしてくれたのだが、それは恐怖とも隣り合わせだった。
いっぽう、Rosaの助けでプラハから弟を救い出す計画が進んでおり、Joeの人生はようやくバラ色になってきた。だが、Rosaにプロポーズする予定だった日にすべてが崩壊する。自暴自棄になったJoeは、Rosaが妊娠していることも知らずに姿を消し、ドイツ人を自分の手で殺すために海軍に志願する。彼が送られたのは、あろうことか南極の基地だった。
取り残されたRosaはSammyに救いを求める。同性愛者として警察とFBIから暴力を受けたSammyは、Tracyと分かれた後だった。互いを守るためにふたりは結婚するが、戦争が終わってもJoeは戻ってこなかった。
歴史と伝説が入り交じる思いがけない冒険に満ちた、近代クラシック。
著者は、小説の中で主人公が生み出したスーパーヒーローコミック『Escapist』を実際にクリエイトして販売している。
ここがポイント!
第二次世界大戦当時のプラハとニューヨーク市、ユダヤ人を救うために作られた粘土人形Golemの伝説、ハリー・フーディーニに代表されるマジックを芸術として伝承するユダヤ系文化、スーパーヒーロー・コミックの黄金期と凋落、同性愛が犯罪とみなされていた時代のゲイの苦悩、第二次世界大戦中の南極基地の活動...、など興味深い史実と伝説が混じり合い、非常に読み応えがある。
文章の巧みさで定評がある作家だが、プロット重視でもある。
難易度<超上級レベル>
冒頭のプラハの部分が長いので、そこで飽きてしまう読者がいると思う。
だが、中盤を過ぎると、何度も思いがけない展開があり、読むスピードが上がってくる。
洋書を多く読み慣れている人向けだが、児童書のSummerlandは読みやすい(中級と上級の中間)。
適正年齢 R 15
高校生以上
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。