引き続き、番外編3 です。
ここから入った人は、最初から読んでくださいね。
審査員このブログ「洋書ファンクラブ」の主宰者
某大型書店の洋書仕入部門で働く会社員。 神戸のインターナショナルスクールに通っていたころから洋書が好きで 読んでいるけど、最近しみじみと「読書は体力だ」と思います。 女性が主人公になって活躍する小説が好み
2008年よりオーストラリア在住で、このまま永住予定。 今年から念願の(仮付き)サイコロジスト。大学院で心理学を勉強中です。 そのせいなのかキャラクター重視の本が好きで、自覚がなかったけれど重い本を推薦する傾向があるみたいです。 ジャンルを問わず本を読むのがとにかく好きで、最近はオーストラリア人作家の本を広めようとひそかに活動中。
ディスカッションのつづき
●大物が揃い過ぎて悩ましい「これを読まずして年は越せないで賞」児童書&YAフィクション部門
では次は児童書&YA部門です。今年の候補作は全部よかったですよね。そのなかでみなさんが最終候補に残したいオススメはどれでしょう。私のいちばんは『The Fault in Our Stars』。あのテーマを楽しく書けるという点にグッときました。
メインのキャラクターがふたりとも頭がいい子たちで、なんといってもガスに惚れちゃう。
私は作者のジョン・グリーンに惚れかけました(笑)。この作品も彼もユーモアがあって暖かいところが好きです。
(下のビデオは、最新のVlogbrothersのものなので、さかのぼって「Time for Awsome」を観てください。ジョン・グリーンが『The Fault in Our Stars』について語っています)
マンガ化するといいと思うんですよね~。映画化の予定はあるんですよ。主人公はあの子がいいかも…『ハンガー・ゲーム』の…
ジェニファー・ローレンスは演技力もあるし、いいかも。顔はふっくらしたままで平気だし。ガスは誰がやるのか、それが問題ですよね…。
アンドリュー・ガーフィールド!と思ったんですけど、年齢が合わない。残念。
その点、マンガ化なら生身じゃないからいいんですよ。映画化でイメージ壊されたくないなあ。『トワイライト』だって、あのキャスティングが高校生にかなり不評で、うちの娘や彼女の友人たちは、ずっと文句言ってたの!
みんなが惚れてしまうステキな男子って設定のはずなのに、どこがー?みたいなねえ。逆にベラはもっとふつうのかわいい女の子だったらよかったのに。映画は難しいです。
さて『Wonder』はどうでしたか?
語り手が章ごとに変わるところがよかったです。私、あの友だちの気持ちよくわかる。
そう、大人がまず子どもたちの見本となるんですよね。理想的な大人が登場しますよね。この本も最終候補に残しましょう。オーストラリアの『Jasper Jones』と『Past the Shallows』はどうでした?
いい意味でヘビーな『Past the Shallows』も『Jasper Jones』も、もう少し自分にオーストラリアの自然や歴史の知識があったら、もっと理解が深まったのではないかという気がします。
オーストラリアのYAは独特で不思議な雰囲気があって、予想外の展開になる話が多い気がします。また、YAにしてはテーマが重いものが多いような…。これはちょこさんがそういう本を選んでいるからなのか、オーストラリアの風土なのか…。
ちょこさんの選んでいる本がそうなのかもしれないけど、アメリカのYAとは雰囲気が異なるのは風土的な違いもあるかもしれないですね。
重いものをお勧めする傾向があるのは確かです(笑)。アメリカの西海岸と東海岸、もっと大きくアメリカとイギリスの間でも風土的違いがあるのと同じで、オーストラリアは人も文化もアメリカ・イギリスとは全く違うので、作品にも表れていると思います。
なるほど。また、アメリカは売れ筋のものを出版社が選ぶので似たようなパターンになっちゃうけど、オーストラリアのYAにはパターンがないような…。
ちょこ:オーストラリアの出版社が今何をYAに求めているのか、ちょうど今年、オーストラリアのYA作者さんと話す機会があったんですが、ジャンル・スタイルに関係なくユニークでよいものを出したい、推していきたいというスタンスのようです。
それはいい傾向ですね。先が読めてしまうパターンの話ばっかりになってしまうと、読んでいてもまったく面白くないし。『Jasper Jones』はこれはどういう話に転ぶのか…と思いながら読んでました。
そもそも『Jasper Jones』は、Jasper Jonesの話じゃないっていうのが衝撃でしたよね? Jasper Jones自身が物語の中でどういう位置づけなのか最後までわからない。あくまで主人公の成長譚なんですよね。いっぽうで『Past Shallows』はよかったけど、それほど深く印象に残ってない。なんでだろう。
私も2冊をくらべると『Jasper Jones』のほうが印象的でした。『Past Shallows』は出てくる表現がどれもとてもきれいだけど、読み終えたときに物語としての読後感よりも、そうした途中の表現のほうが記憶に残ってしまって。
水の感じ、波の感じ、海の感じはよく出ていて、表現力はすごくあるんですよね。最後までとても暗くて苦しい話だけど、そうした暗い物語を通して作者が何を伝えたいのか、それが見えてこないというもどかしさがありました。
あえて結論を出さずに読者に問いかけていて、「やられた!」と思う本もあるけど、これはモヤモヤしたまま。すごくいい本だけど、例えて言うなら、「ブッカーの受賞作じゃなくて候補作」という感じがします。
なるほど、なるほど。私は最後の2章で作者の思惑通りに持っていかれてしまい、読後本をぎゅーっとしたまましばらく動きませんでした。そのぶん印象深く残ってて、そこらへんを評価しちゃったかも。
『The Raven Boys』は他の候補作とくらべるとやや落ちるし、これは三部作ですから今年は外してもいいかも。これも一筋縄でいかない面白い展開の物語です。
では『The Raven Boys』は続編を待ちましょうか。児童書フィクション部門で最終候補に残すのは、『The Fault in Our Stars』、『Wonder』、『Jasper Jones』の3冊で。
今年のYAは選ぶのが難しいな~。大人のフィクション部門と戦わせたい。
...次はいよいよ連載最終回のフィクション部門です。お楽しみに!
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