Tahereh Mafi
ハードカバー: 352ページ
出版社: HarperCollins
ISBN-10: 0062085484
ISBN-13: 978-0062085481
発売日: 2012/1/1
YA(ヤングアダルト)/SF(ディストピア小説)/ロマンス
Julietteは人に触れてはならない。なぜなら、彼女に触れられた者は痛みと苦痛で死に至こともあるからだ。うっかり幼い子供を助け起こして死亡させてしまったJulietteは4年前から精神病院の個室に閉じ込められていたが、ある日意外なルームメイトが加わる。
それは、同じ学校に通っていた少年Adamだった。
JulietteにとってAdamはもっとも大切な思い出だったのに、彼はJulietteのことを覚えていないようだ。残酷とも言える態度を取るAdamを、けれどもJulietteは憎みきれない。
●感想
本ブログでも沢山ご紹介しているのですが、The Hunger Gamesの大ヒットのおかげで、YAジャンルはディストピアものであふれています。
柳の下のどじょうを狙う作品のなかでも、このShatter Meは前評判が大きかったものですし、発売後もそれなりに良く売れているようです。出たときは読む気がなかったのですが、オーディブルで4.95ドルという会員特別価格になったのを機に試してみることにしました。
地球の温暖化や環境汚染に真剣に取り組まないことへの警笛を鳴らすテーマには好感を抱けるのですが、あまり成功しているとはいえない実験的な書き方に辟易してしまいました。オーディオブックで真っ先に気になったのが、書いて消した部分のサウンド効果でしたが、それは著者のせいではありません。私が辟易したのは、文学的にしようと試みて失敗している表現や無意味なくり返しです。それが気になってストーリー展開になかなか集中できませんでした。
たぶん著者は主人公のキャラクターを純粋に心が清い女性として設定したのでしょうが、彼女の思考回路は不自然で、最初から最後までフラストレーションの連続でした。
オーディオブックでのJulietteのwhiney(めそめそ、ぐじぐじ)した声は、女の私が聞いても逃げ出したくなるほどですから、男性はぜったいに耐えられないと思います。「こういう女の子に惹かれる男の子がいるという感覚はアメリカ的ではないなあ」と思っていたら、やはり著者はイラン系のアメリカ人女性でした。アメリカで暮らしていても、家庭で教わった男女の役割についての考え方が抜けないのだと思うのです。以前、イラン人と日本人ハーフの”ジャーナリスト”の女性に会ったときのすっきりしない思いとよく似ていました。
「私ってゴージャズなの?知らなかったわ〜」「私って、人を殺そうと思えば殺せるのよ。でも、とことん聖人だから、自分が傷ついてもそんなことできないのっ」「私に触っちゃだめよ、死んじゃうから。でもほんとは触ってほし〜の〜」という感じの説明が何度も何度も何度も出てきて、脳の血管が切れそうでした。
とことん私の趣味ではない女主人公です。
しかしながら、美しくて強いのにそれを利用せずに申し訳なさそうに生きている心があまりにも清いヒロインと、それに惹かれるゴージャスな青年ぞくぞく出演!というタイプのYAロマンチックファンタジーへのニーズは(大人のロマンスファンにも)あります。
暇つぶしに読むとしたら、十分合格レベルでしょう。大多数の読者は"Sooo good!"などといった良い評価を与えていますから、お姫様と騎士が出てくるSFおとぎ話として読めば楽しいのではないかと思います。
ただし、よくできたYAものをこれまで何度か読んでいる人は、都合が良すぎるプロットや、主人公の人物造形が気に入らないと思います。また、「私なんかダメな子なのに〜、どうして〜」というタイプの女性が我慢できない読者にもおすすめできません。
三部作の第一部で、来月には一部と二部の間を繋ぐノベラが電子書籍のみで発売されるそうです。
●読みやすさ 簡単
内容も英語の簡単さもTwilightかそれよりも簡単なレベルです。
●おすすめの年齢層 高校生以上
ラブシーンはキス程度ですが、雰囲気がSFというよりもロマンス小説的になってくるので、高校生以上。
コメント
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