ハードカバー: 336ページ
出版社: HarperCollins
ISBN-10: 0062048503
ISBN-13: 978-0062048509
発売日: 2011/10/4
YA(ヤングアダルト)/SF(のふりをしている)ロマンス
疫病の蔓延で、人口の9割以上が死んでしまった近未来ディストピアが舞台。
孤児は、男女に分けられており、女の子たちは、寄宿制の学校で12年生まで育てられる。そこを卒業すると職業学校に進み、自分の好きな職業を選んで社会に貢献するようになる、と教えられているが、事実はまったく違った。
学校を主席で卒業することになっていたEVEは、前夜にその恐ろしい事実を知って、学校を逃げ出す。安全な隠れ家のCalifiaを探して、仲が悪かった同級生と危険な旅をし、その途中でCalebという少年に出会う。
●感想
これでも物書きのはしくれなので、文章を書くということがどんなに大変な作業であり、本を出版するまでの苦労がどんなものかは分かっています。ですから、献本していただいた本は、良い所を見つけようとします。そして、正直に良いところと、感心しないところを書きます。でも、良いところがまったく見つからなかった本は(時間を既に費やしてしまったのに)、紹介しないという選択もします(残念なことに、けっこうよくあります)。
けれども、「手抜き」が見えるものや、「どこがいけないのか、書く意義がある本」については、感想を書かしてもらっています。
Eveは、それらの条件に当てはまるので、書かせてもらおうと思いました。
1)SFとしての最低限度の新鮮な発想や面白さがゼロ
疫病で多くの人が死んだ後のディストピア小説は数えきれないほどある。
孤児が集まる「学校」の残酷な事実は、内容が異なるにせよ、Never Let Me Goに酷似した設定。
それ以外に何も新しいものがない。驚きもない。読み進める理由がない。
2)登場人物が二面的で薄すぎる
通常は、作者本人が、周囲の人々を観察し、洞察し、分析することで、興味深い登場人物が生み出されるものです。けれども、この作家の場合は、読んだ本から登場人物を作り出していると感じました。まったく深さがないのです。
主人公のEveも、読者に「頭が良い」「優しい」と思わせたいようですが、彼女の言動からは、その逆の、自己中心的で浅はかな姿が浮かび上がります。Calebも、通常には存在しないような男の子ですし、彼らを助けようとする老夫婦も「エキセントリックな老人とはこんなものだろう」という感じ手抜きに描かれており、うんざりしました。
こういった本が、大手の出版社から出版されるのは、Twilightのヒットで本を読み始めた読者に対して「売れる」と考えられているからです。これまでにご紹介したこの作品もそうでした。SFやファンタジーのファンではなく、インスタントラーメンのようなロマンスを異なる状況に置き換えて読み続けたい少女(大人の女性もいる)には、たぶん楽しめるのではないかと思いますが、3部作全部につき合うほど気に入る人は少ないのではないかと思います。
でも、こう思うのは、私が多くの本を読んでいるからです。
SFやファンタジーを読み慣れていない方には、けっこう楽しめるかもしれません。
●読みやすさ やや簡単
私は午後の3時間ほどで読了しました。細かいところまではじっくり読んでいませんが、表現が単純なので、簡単です。
●おすすめの年齢
ロマンスといってもキス程度です。けれども、レイプ未満や「妊娠」の話題がありますので、高校生以上。
コメント
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