Louis Bayard
ハードカバー: 352ページ
出版社: Henry Holt & Co
2011/3/29刊行
歴史ミステリー
現代のワシントンDCからエリザベス朝(チューダー時代)の英国を舞台にした、歴史ミステリー。
学術的な失態をおかして名声を失ったエリザベス朝の専門家Henry Cavendishは、学問の場に戻ることなく、冴えない生活を送っていた。Henryの旧友で有名な古書のコレクターAlonzo Waxが突然自殺し、その葬式でHenryは赤いドレスを着た不思議な女性を目撃する。
すべては、エリザベス朝に存在が噂された「School of Night」 に関連しているようだった。現在School of Nightと呼ばれているのは、1592年当時には「School of Atheism(無神論者の学校/グループ)」と呼ばれ、ウォルター・ローリー、クリストファー・マーロウ、ジョージ・チャップマン、トーマス・ハリオットといった詩人や科学者がそのメンバーで、ヘンリー・パーシー (第9代ノーサンバランド伯)がパトロンだったと言われている。疑惑をかけられたメンバーの多くは処刑されたり謎の死を遂げているが、「School of Atheism」が存在した証拠は残っていない。「School of Night」という呼び方は、シェークスピアの「 Love's Labour's Lost (恋の骨折り損)」に登場するもので、知識人の集まりであるSchool of Nightに加入を許されなかったことにシェークスピアが嫉妬心を抱いていたのではないかとも言われている。
Alonzoの葬式でHenryが会った女性Clarissaは、毎晩のようにSchool of Nightの夢にうなされていた。それがきっかけでAlonzoと知り合ったのだが、どうやら彼女にはもっと秘密があるようだった。
AlonzoがBernardから盗んだ書類は、ローリーがハリオットにあてた手紙の一部だったが、それに「School of Night」の秘密の宝の在処が隠されているらしい。Henryは、受け身ながらも宝探しに巻き込まれ、トーマス・ハリオット(上の肖像画)の知られなかった過去を学んで行く。
●ここが魅力!
「School of Night」という実際に存在した(と思われている)グループをテーマにしたこの歴史ミステリーは、トーマス・ハリオットは、著書をあまり残していないために現代人にさほど知られていませんが、ガリレオよりも先に望遠鏡を使った月のスケッチをし、太陽黒点を世界で最も早く発見したひとりだと言われる天才的な天文学者で数学者でした。
そのハリオットの過去の物語と、現代のヘンリーの話が重なり、ミステリーにちょっとオカルト的な雰囲気を与えています。
私が一番楽しんだのが、エリザベス朝のトーマス・ハリオットのストーリーです。彼やSchool of Nightのグループについてもっと読みたかったので、少々物足りない気分でした。
歴史の面白さと、謎解き、追う者と逃げる者のドタバタ劇...と、大人気の「ダ・ヴィンチ・コード」を連想させる雰囲気がありますが、 The School of Nightのほうがずっと文章がましなので、知的に感じます。ジャンルとしては似ていますので、「ダ・ヴィンチ・コード」のファンにお薦めです。
私は「ちょっと都合良すぎる展開」とこじつけが気になりましたが、米国の読者の感想はほぼ良いようです。
●読みやすさ 普通(ネイティブの普通、という意味です)
文そのものは簡単です。けれども、英語の本を読み慣れている必要があります。
文学的な解釈は不要ですから、歴史ミステリーがお好きな方は難なく読めるでしょう。
●対象となる年齢
得に生々しい表現はありませんが、性的なシーンはあります。表現は地味です。
高校生以上。
コメント
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