Paula McLain
ハードカバー: 336ページ
出版社: Ballantine Books
(2011/2/22)
史実に基づいた歴史小説/第一次世界大戦時期
生涯4回結婚したアーネスト・ヘミングウェイの最初の妻、Hadley(ハドリー)の視点から描いた小説。
出会ってからたった9ヶ月でスピード結婚した2人は、ハドリーが受け取った遺産を資金に、シャーウッド・アンダーソンがアーネストに熱心に薦めたパリに移住した。アーネストは、まだ何も出版していなかったが、行動は既に売れっ子作家のものだった。シャーウッドが伝えたように、当時のパリは前衛的な芸術家たちのたまり場だった。アーネストは、そこでフィッツジェラルド夫妻、エズラ・パウンド、ガートルード・スタイン、といった現代アメリカ文学の重要な立役者たちとすぐさま親しくなり、次々と才能を発揮してゆく。
けれども、セントルイスの内気な箱入り娘だったハードリーにとって、頭脳も舌もシャープな芸術家たちとの交流は簡単なものではなかった。集団の中で孤独な気分になることも、少なくなかった。
アーネストは才能にあふれ、並外れてチャーミングだったが、傲慢さも人並み以上だった。見返りを求めずに援助してくれたアンダーソンやスタインを侮辱して友情を失い、無名の頃から彼を支えて来た妻を裏切って彼女の友人ポーリン・ファイファーと情事を始める。
●ここが魅力!
私がヘミングウェイの作品を片っ端から読んだのは高校生のときでした。「誰がために鐘は鳴る」、「武器よさらば」、「老人と海」...と翻訳されているものを全部読んだ記憶はあるのですが、詳細は覚えていません。覚えているのは、戦争の場面があったことと、泣いたことくらいです。あの当時ヘミングウェイが好きだったのは、ドラマチックだったからでしょう。
この本は、4回も結婚したヘミングウェイの最初の妻ハドリーの第一人称で書かれている小説です。 著者がハドリーを選んだ理由は、アーネスト・ヘミングウェイが自殺する前に書いた自伝「A Moveable Feast 」で非常に理想的な女性として書かれているからだったそうです。野心だけが財産だった時代を共に過ごしたハドリーに対しては、その後も特別な思いを持ち続けたようです。
The Paris Wifeそのものは興味深く読みましたが、アーネストにとってのハドリーの魅力がきちんと描かれているかというと、疑問です。それよりも、アーネストの人間としての欠陥のほうに説得力があります。どちらにしても、ヘミングウェイの作品をもう一度英語で読み直したくなる本です(そして、「A Moveable Feast 」も)。今の私がヘミングウェイの作品を読んでどう感じるのか、それに興味があります。
●読みやすさ 普通
一人称で書かれているので、読みやすく感じるでしょう。けれども最初のうちはけっこう退屈です。パリに行ってからは、有名な登場人物が出てくるので面白くなりますが、心理的なアクションはまだ足りない感じです。
●対象となる年齢
性行為について書かれている部分はありますが、さほど露骨ではありません。そう意味では高校生以上が対象。けれども、結婚やそれにまつわる人間関係がテーマですから、おすすめするのは大人です。
とても興味深いです。私も、ゆかりさん同様高校生の時にヘミングウェイにはまりました。さっそく2タイトルともAudiobookを図書館で予約しました。また、通勤の楽しみが増えました、ありがとうございます。
投稿情報: アリゾナ | 2011/04/02 23:46