Clare Vanderpool
ハードカバー: 368ページ
出版社: Delacorte Books for Young Readers (2010/10/12)
児童書(9 - 12歳)/歴史小説/第一次大戦〜世界恐慌時代の米国中西部
2011年ニューベリー賞受賞作品
1936年カンザス州マニフェスト町で、一人の少女が列車から飛び降りる。
12才のAbilene Tuckerは、鉄道工事の作業員の父と町から町を旅してきた。貧しいけれども二人きりの生活に満足していたのに、なぜかこの夏、父のGideonはAbileneをひとりでマニフェスト(Manifest)町に送りつけた。
Abileneは、床下に隠されていた箱から1918年にNedがJinxという友人に送った手紙や鍵を見つけ、それをヒントに夏休み前に1日だけ行った学校で知り合った友達二人と、手紙に書いてあるスパイごっこを始める。
スパイごっこの一方で、Abileneは町の者が近寄らないジプシーの占い師Miss SadieからNedとJinxの物語を聞き始める。それは、ShadyやHattie Maeが語らない町の過去だった。
●ここが魅力!
この小説では、第一次世界大戦中の1918年と世界大恐慌中の1936年の話が同時に進行します。これまでにもThe Storm in the BarnやThe Boneshakerをご紹介したことがありますが、この時代は 、第一次世界大戦の影響、禁酒法(1919から1933年。カンザス州ではもっと長かった)、 大恐慌、そして米国の中西部農業地帯を襲った深刻な干ばつ、と米国の歴史の中で非常に暗い時代です(右の写真は干ばつ時代のカンザス)。
また、それと同時に、米国に多くの国から移民が押し寄せていた時代でもあります。
私がまず覚えたのは、子どもの頃にトム・ソーヤを読んだときの懐かしい感覚です。Abileneになりきって、森や町を探検し、大人たちをスパイし、あれこれと(大人にとってはくだらないけれども、子どもにとっては重要な)計画を立てるどきどき感が、鮮やかに蘇ってきました。
小説の舞台Manifestは架空の炭坑町ですが、実際に存在していないのが不思議なほど鮮やかに描かれています。また、かのFried Green Tomatoes at the Whistle Stop Cafe のように、癖がある登場人物と彼ら独自のユーモアと道徳観、そして素朴な人々の人情が魅力的で、何度も「読み終えるのがもったいない」と感じました。
作者がモデルにした町には、Manifestのように実際に21カ国からの移民が集まっていたということです。この物語を読み進めるうちに、異なる文化や言語を持つ移民が支え合って作り上げたのがアメリカ合衆国なのだと感じさせてくれます。
その場に溶け込める表現力、人物造形、謎解き、胸が暖まる読後感、とすべてが揃っており、最近読んだ中で最も好きな児童書のひとつです。
●読みやすさ 中程度〜やや簡単
文体は簡潔ですし、読者を引き込んでくれますから、その点では「読みやすい」本です。けれども、キリスト教独自の表現(perdition, divining, redeemer)のニュアンスを歴史的背景を含めて理解するのは難しいのではないかと思います。
●対象となる年齢
どの年齢にもおすすめできますが、話の内容が理解できて楽しめるのは小学校高学年以上でしょう。
読みやすい英語の洋書を求める大人におすすめしたい本です。
亜希子さま
いつもご訪問いただき、ありがとうございます。
この本は、子どもよりかえって大人が好きかもしれないと思ったりもしました。
日本にもこんな児童書があればいいのに、と思わせてくれた、心温まる本でした。
お楽しみください。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2011/07/29 06:01
初めてコメントします。
英語の勉強をちゃんと初めてはや3年
まだまだGIVEUPしてしまう洋書や積読もありますが、
月に1冊ぐらい洋書が読めるようになってきました。
いつもこちらのブログを参考にしてからamazonでレビューを見て購入する本を決めていました。
次はこちらの本に挑戦しようと思っています
これからもぜひ素敵な本の紹介よろしくお願いいたします
投稿情報: 亜希子 | 2011/07/29 05:53