初版:1968年発売
児童書/ファンタジー
lilac woodという森に住むユニコーンは、ずっと孤独に暮らして来た。年老いた彼女は、ある日自分がこの世界に存在する最後のユニコーンではないかと思う。他のユニコーンを探すために、安全な森を離れて彷徨い始めたユニコーンに、蝶が「勇気があれば他のユニコーンを見つけられる」と伝える。蝶が与えたヒントRed Bullを手がかりに他のユニコーンたちを探す旅に出たユニコーンだが、あくどい魔法使いのMommy Fortunaに捕えられ、見世物にされる。
彼女を救出したのは、ろくな魔法が使えない魔法使いのSchmendrickだった。
ユニコーンについていったSchmendrickは盗賊たちに攫われ、そこで生涯ユニコーンを探し求めて来たMollyに会う。別々の理由でユニコーンに惹かれた2人は、ユニコーンの従者としてRed Bullとその主人である悪名高いKing Haggardが住む城を訪れる。
しかし、出来が悪い魔法使いのSchmendrickには、ときおり自分でコントロールできない強力な魔法を使えることがあった。Red Bullの攻撃から守るためにSchmendrickの魔法で美しい人間の女性に変えられてしまったユニコーンは、人間の身体という牢獄に閉じ込められた自分の運命を嘆き、自分の森を離れたことを後悔する。その美女Lady Amaltheaに恋したのが、Haggardの息子Lir王子だった。
●ここが魅力!
The Last Unicornは、多くのSF/ファンタジー作家が「最も心に残る児童書」として挙げているファンタジーのクラシックです。
永遠の命を持つ美しいユニコーンに対する憧れ、所有欲、そういった醜い人間の心が多く登場しますが、同時に童話に必要な無償の愛も。また、ファンタジーは主人公がクエストの前と後で変化している必要がありますが、それぞれのキャラクターについての変化の解釈には、読者の人生観が反映するかもしれません。
その他にも、人間の身体に閉じ込められたユニコーンは幸福なのか不幸なのか、永遠の命は幸福なのか不幸なのか、大人でもいろいろと考えさせられます。
「フェアリーテールにはヒーローが必要」といった、ニヤリとさせるユーモアもたっぷりですが、根底に流れているのがsorrowです。この静かなsorrowがThe Last Unicornを永遠の傑作にしているのでしょう。
●読みやすさ 中程度
児童書ですが、決して簡単とは言えません。
フェアリーテールのもったいぶった表現が多く、高校生を対象にしたYAものに比べると、ずっと読みにくく、分かりづらいでしょう。けれども大きな文字で300ページ以内ですから、いったん文章のスタイルに慣れたら読み切りやすいと思います。
●適切な年齢
親が読んであげたら、小学校低学年から読んでも大丈夫です。
でも、ストレートな物語ではないので、一番楽しめるのは大人かもしれません。
洋書ファンクラブjr.で小学校4年生のもえさんがレビューを書いておられます。それもご参考にしてください
コメント
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