James A. Levine
出版社:Spiegel & Grau
2009年7月7日発売予定(明日)
224ページ
文芸小説/児童虐待・性的奴隷
この本の収益はすべてthe International and National Centers for Missing and Exploited Children に寄付されます。
Mumbaiの15歳の娼婦Batukは、インドの農村で多くの親族に囲まれるごくふつうの子供時代を送った。特に空想好きで明るく可愛い彼女は父親の一番のお気に入りだった。だが、9歳になったばかりのとき、金に困った父から性的奴隷として売りとばされる。
逃げることが不可能な環境で、しかも危険にさらされながら働くBatukの唯一の心の糧はノートに自分の人生を書き綴ることだった。
親から売られた子やホームレスの子供たちが辿る運命は、映画Slumdog Millionaireで描かれた世界とよく似ている。SlumdogのLatikaの体験もきっとBatukのようなものだったのだろう。だが、BatukにはJamalのような王子様がいない。Batukの唯一の救いは、むごい現実を書き記しながらも現実を逃避するような童話を創作し続けることである。
私がつい涙したのは、Batukが愛していた父から売り飛ばされたシーンと、“I make sweet-cake (セックスのことを彼女は「お菓子を焼く」と表現する) and I am nothing else. I eat, breathe, and move to fulfill that role alone. Others have more complex functions.”と自己評価するところ。もともと利発で、結核の治療中に自学で読み書きを学んだほどであり、将来教師になりたいと夢見たこともあるBatukだが、9歳のときから逃げることが不可能な環境で性的奴隷になってしまったのだ。だから、「娼婦!」と呼ばれ、さげすまれ、虐待を受けてもただ受け入れることしかできないのである。
自分の人生を生きるチャンスを与えられなかった子供たちがどんなにピュアな魂を守ろうとしても、汚い大人たちが奪ってしまうのである。魂の虐待ほどひどいものはない。
作者のJames A. LevineはMayo Clinicに勤める英国人医師で、この物語はクリニックの調査で彼がMumbaiのホームレスの子供たちを取材した経験から生まれた。Street of Cages と呼ばれるMumbaiで最も悪名高い売春地区で取材をしているときに、Levine医師はそのcage(娼婦の部屋)の前で若い女性が一生懸命ノートに書き込みをしているのを見かけた。Levineは彼女に興味を抱いて取材し、そこからこの物語を書いたのである。
取材に基づいているだけあって、英国人の中年男性が書いたものとは思えないほどリアルである。
また、あまりにも虐待がリアルで、気分が悪くなったところも多々ある。
こんなふうに売春に反対することを書くと、日本では堅苦しい奴だと煙たがられる風潮がある。だが、私は性の自由や表現の自由に反対しているのではない。この産業が嫌いなのは、選ぶ権利を持たないBatukのような犠牲者を生むからである。
The Blue Notebookを読むことでもっと多くの人が児童買春や性的奴隷の非人道性に気づいてくれ、どんな形でも加担したり許容したりしないようになってくれれば嬉しい。
私が受け取ったARCには、13カ国での翻訳が決まっていると記されていたが、日本はその中に含まれていなかった。できれば多くの人に読んでいただきたい本である。
●読みやすさ ★★☆☆☆
200ページちょっとの薄さで、読了しやすい本です。
15歳の教育を受けていない娼婦が書いたことになっていますが、作者がインテリなので難しい単語がけっこう出てきます。文法は簡単です。
まるでインド人が書いたような寓話的な表現が多く、それゆえ読みやすく感じる人とかえって理解しにくい人とがいるでしょう。
●アダルト度 ★★★★★
ショッキングなシーンが多いのでご注意ください。
●この本と一緒に観てほしい映画。
コメント
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