Justin Locke
自費出版
ユーモア・エッセイ/クラシック音楽
文章のサンプルはこちら
注文は作者のサイトからどうぞ。PayPalで日本からでも注文できるようになってます。
自費出版の薄い本ですから何の期待もせずに読み始めたところ、予想を裏切る(?)面白さ。あまりにも可笑しくて、ひとりでケタケタ笑っていたら、夫に「大丈夫?」と心配されました。
作者はBoston PopsのBass(コントラバス)奏者だったJustin Lockeです。
クラシック音楽のファンであれば、ボストン・ポップス・オーケストラの名前は耳にしたことがあるはずです。ボストン交響楽団が夏のオフの間にポピュラーミュージックを演奏するために編成を変えたもので、基本的には同じメンバーで構成されています。でも、ボストン・ポップスには、公演ツアー用のもうひとつのボストン・ポップス、Boston Pops Esplanade Orchestraが存在するのです。Lockeが属していたのは、アーサー・フィードラーとジョン・ウィリアムズが指揮をしていた頃のこのEsplanade Orchestraで、来日したときのエピソードも載っています。
それによると、ジョン・ウィリアムズが来日したときにコントラバスが演奏中にくるくる回転したのは、Lockeの仕業だったのです。
クラシック音楽と音楽家はくそまじめ、という印象がありますが、Lockeが描くプロのクラシック演奏家の世界は滑稽なエピソードだらけ。音楽を少しでも知っていると、その可笑しさが倍増します。たとえば、特殊な絶対音感を持った歌手と演奏しなければならなかった困難とか、演奏家に尊敬されようとして見事に失敗した若い指揮者のエピソードとか、シチュエーションを想像しただけで笑いが止まりません。楽器により演奏者の性格が異なるというのも(私は合唱でしたが)、吹奏楽団、オーケストラ、Jazzバンドで楽器を演奏する娘に尋ねると、「まさにそのとおり」とのこと。特にLockeの説では、”Bass Players differ from all the other members of every orchestra in one very basic way: no bass player, at least to my knowledge, ever chose to be a bass player.”ということで、コントラバス奏者は”reluctant ‘draftees’ of the orchestra”なのだそうです。だから、どんなにすごいオーケストラで職をみつけても、その「なんとなくここに流れ着いた」という根本的な性格は変わらず、従って競争心が激しくてプライドの高い他の楽器演奏家とは異なり、彼らの態度は、”this thing is pretty much impossible to play, we’re doing the best we can, and we didn’t really want to be here anyway, so don’t bother us with your prissy nitpicking”なんだそうです。
また、次の章の「音楽専門用語集」のClam(間違い)という専門用語には、”A really obvious wrong note, usually played by a brass player.”という説明がついています。クラシック音楽を聞いている人なら匹敵する場面を思い出してつい吹き出してしまうでしょう。際立った傑作ではありませんが、昔ながらの良質のユーモアは心を軽くしてくれます。笑いだけでなく、ほのぼのする思い出話もあり、読み終わると作者とお友達になった気分になります。
下記は作者自作自演の製薬会社TVコマーシャルのパロディ。アメリカの製薬会社のコマーシャルを知っている人にしか分からないユーモアなのが残念です。
●読みやすさ ★★★☆☆
200ページという薄さで、フォントも大きいので読了しやすい本です。
また、1章が短くて読みきりやすく、達成感も得ることができます。
話し言葉のようなスタイルで読みやすく感じます。
楽器を演奏したことがある方や音楽ファンであれば、英語がさほどできなくても読みやすいと思います。サンプルを試してみてください。
●アダルト度 ☆☆☆☆☆
音楽好きなら誰でも楽しめる本です。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。