Jodi Picoultは、好きというよりもストーリーテラーとしての力量を尊敬している作家です。
毎年のように新刊を上梓する多作にもかかわらず、社会的に異論の多い重いテーマを取り上げ、綿密な取材をしたうえで、「あなたなら、どうする?」と問いかける作品に仕上げます。Picoultのお得意は、時事、医療、法律を織り込んだ心理スリラーです。
登場人物が多いので混乱しやすく、専門用語も頻発します。慣れれば読みやすい作家ですが、英語に慣れている必要はあります。
読みやすさのレベルは★★☆☆☆です。
最近発売された「Handle With Care」はすぐさまニューヨークタイムズ紙の1位に踊り出ました。それだけファンが多いということでしょう。
あまりにも作品数が多いので、Jodi Picoultを読んだことがない方はどれを手に取ればよいか迷うのではないかと思います。
それぞれの書評は後日加えますが、とりあえず以下は私が個人的におすすめする順です。
1.My Sister’s Keeper
遺伝子操作や臓器移植などに関する生命倫理がテーマ。
13歳のAnnaは、稀なタイプの白血病に罹患した姉を救うために、遺伝子操作(人工授精の受精卵で遺伝子が合致したもののみを着床させる方法)で生まれた。これまですでに何度もドナーの役割を果たしてきたが、ついに姉に腎臓提供をすることを求められる。
子供を救うために新たな生命を生み出すことは倫理に反するのか?ドナーとして生まれた妹に拒否する権利はあるのか?兄弟や姉妹が難病にかかっているときに、ほかの子供たちが受ける心理的なトラウマとは?
登場人物が多いにもかかわらず、それぞれの心理や理念が鮮やかに描かれている。読者が自分の信念を自問せずにはいられなくなる重い作品である。誰も予測できない結末には、しばし呆然とするだろう。
2. Nineteen Minutes
高校での大量殺人がテーマ。
幼いころからずっといじめられてきた高校生のPeterが学校で10人銃殺する。
このケースを扱うことになった女性裁判官は公平を保とうとするが、自分の娘が事件に深く関わっていることが明らかになってくる。
「善」と「悪」の白黒判断ができない、殺人犯、被害者、生存者、殺人者の親、それぞれの立場を語る問題作。
3. Second Glance
Abenakiインディアンを対象にした1930年の優生学プロジェクトとパラノーマル現象がテーマ。
交通事故で愛する女性を失ったRossは彼女の後を追いたくて危険なことに挑戦するが、死ぬことができない。パラノーマル現象の調査官(こういう仕事が実際にある)としてヴァモントの小さな町を訪ねる。70年前の優生学プロジェクトのトラウマを引きずる人々、幽霊(超常現象)、Abenakiインディアンの法的な戦い、先天性の難病を持つ甥、失われた愛とそこからの回復......、など多くのテーマを見事にひとまとめにした、不思議な余韻を残す作品。
4. The Pact
Gold家とHarte家は、家族同士で付き合う仲の良い隣人だった。高校生のChrisとEmilyが付き合うようになり母親たちは喜んでいたが、ある夜ChrisがEmilyを拳銃で殺害した罪で逮捕される。Chrisは無実を主張するが、誰にも語れない秘密も抱えていた。裁判で有罪になれば、未成年とはいえ無期懲役になる可能性がある。Chrisは本当にEmilyを殺したのか、だとしたらなぜなのか?外部からは単純に白黒を判断することができない真実の「灰色」さを考えさせてくれる。
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