教育に関するノンフィクションを書くために2003年ごろから2~3年かけて私が住んでいる町の教育長、教育委員、校長、教師、生徒(小学生から高校の卒業生まで)を取材したことがあります。
それ以前、プレスクールからお手伝いで学校に入り込んでいたので、現時点で同じ子供たちを計10年ほど追ったことになります。興味深いのは、幼稚園のときにすでに読み書きと算数ができて教師たちを驚かせた子供たち(多くはアジア系)が、ほぼ全員「まあまあ」程度の平凡な生徒になっていることです。勉強はまじめにするので今でも成績は良いのですが、輝くような才能を発揮していないのです。特に公文式を早く始め、小学校では飛びぬけて算数ができた4人の生徒全員が、高校に達したときには数学が「苦手~まあまあできる」程度にとどまっているのは注目すべきことです。
それとは逆に、幼いころ勉強ができなかった子が高校や大学で優秀な成績を得る現象があります。なかには、ADHD(注意欠陥・多動性障害)または学習障害と診断された子もいます。
同じような問題を抱えていた子たちが、アルコールやドラッグにおぼれる問題児になる場合と、ブリリアントな才能を発揮して楽しい学生生活を送る場合と二手に分かれるのはなぜなのか、もともとの才能の差なのかそれとも周囲の対応の差なのか、それぞれのケースに密着していないので感覚に過ぎませんが、私は対応の差が鍵だと思います。
たとえ学校で問題児のレッテルを貼られなくても、子供にはそれぞれ持って生まれた特性があります。子供の才能を花開かせたいのであれば、早期英才教育は避けてわが子の特性を理解し、短所よりも長所に注目して手助けしてあげることだと思うのです。
ということで、当時私が読んで感銘を受けたADHD(注意欠陥・多動性障害)または学習障害に関する本です。
1. Dreamers, Discoverers, and Dynamos: How to Help the Child Who Is Bright, Bored, and Having Problems in School
ADHDの子供たちは特に幼稚園や小学校で問題児扱いされる傾向があります。このころに教師や親から「おまえは駄目だ」という扱いを受けると、将来までネガティブな影響が残ります。そんな子を理解し、どうやって援助すればよいのかを語った非常に良い本です。親だけでなく、学校の先生方に読んでいただきたい本です。
2.Right-Brained Children in a Left-Brained World: Unlocking the Potential of Your Add Child
タイトルどおり、「右脳型の子供が左脳型の世界で生きること」の困難さを語り、右脳型の子供の潜在能力をいかにして伸ばすか、という具体的な指導が書かれています。日本は特に左脳型の社会だと思いますので、右脳型の子供とその親は特につらい思いをするのではないかと思います。
3. Upside-Down Brilliance: The Visual Spatial Learner
著者は、Giftedのためのセンターを開いた心理学者で、(こういうことを書いて「わが子もGiftedにしたい!」と思う親が現れるのは嫌なのですが)、右脳型は、Visual Spatial Learner(視覚・空間的学習者)であり、それはADHDや学習障害、そしてGifted(天賦の才がある者)と重なっていることが多いようなのです。
この本の良いところは、エピソードが多くて読みやすいところ。そして、「うちの子は大丈夫」という気にさせてくれるところでしょう。ですから、「うちの子(小学校低学年)は字が読めない...」と悩んでいる親がいると、この本を貸してあげることにしています。すると必ずといってよいほど、「うちの子はこれ!」と該当するエピソードを教えてくれます。
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