ストックホルム最後の夜に、かねてから夢に見ていたFrantzén/Lindeberg(シェフ2人の名前を店名にしている)でディナーをしてきました。(1つ星のF12の体験記はこちらをどうぞ)
オープンして1年でミシュランの星をひとつ、2年で2つめの星を獲得したという、世界で最も注目されているレストランのひとつです。S.Pellegrinoの「世界で最も優れた50のレストラン」では、57位でしたが、" the one to watch "(注目すべきレストラン)賞を受賞しています。(追記:2012年は、20位、2013年は12位に上昇しています。「やはり!」という感じ)
*写真は、あらかじめお店の許可を得て撮影したものです。転用はなさらないよう、お願いいたします。All images are not to be used without permission from site owner.
中も外もミニマリストです。一晩に受け入れる客はごく少人数。入れ替えはありません。この夜は、15人で、満席です。
到着すると、大きなテディベアのようなドア番の方が名前を確認し、「オー、ユカリね。ユカリ、ウェルカム」と中に暖かく迎え入れてくれました。
1ヶ月前からしか予約できないので、どうしてもここで食べたい人は、私のように1ヶ月前に予約する必要があります。私は今後スウェーデンに来る機会はまずないと思いますので、一生に一度のチャンス。値段が倍近くになりますが、ワインとのカップリングをすることに決めました。
まずは、給仕の方のご挨拶とAperitifとしてのシャンペンが出てきます。
大理石のプレートの上に最初に出て来たのは、巻物でした。
するすると開けると、このお店がどんなビジョンのもとに作られたのか、どんなお店なのか、という説明が書かれていました。とても興味深い話しです。持ち帰りできると思っていたので、つい写真を撮りそこねてしまいました。
次に出て来たのは、ザリガニとロブスターのハーフみたいな生き物です。
「今日仕入れた特別な材料です。後に形を変えて出てきますからね」とテーブル係の方が持ってこられたのは、Langoustine(通称ノルウエーロブスター)でした。
とても好戦的な生き物らしく、一緒に運ぶと殺し合いをしてしまい、店についたときには沢山死んでいるとのこと。ですから、生きたまま1匹づつ別々に包装されて運ばれるのだそうです。
「最近習ったのですが、かつてはお金持ち専門の食べ物だったんですよね!」と言うと、「今でもお金持ちの食べ物です」と笑われました。そうでした、今日は私もディナーにすごいお金をかける人の仲間入りだったのですよね。すっかり地が出てしまいました(汗)。
「キッチンからのご挨拶がわりです」と出て来たのは、暖かいお手拭きと、一口サイズのマカロンです。中にはフォアグラのクリームが。
次に、今夜の料理にあわせて出てくるワインの紹介です。
右からスタートします。食前からいただきはじめたシャンペンを合わせると、6種類のワインをいただくことになります。
ようやく、プロローグの始まりです。
フライパンで炒めたフォアグラと自家製白桃のマーマレードを添えた、鹿の血で作った一口サイズのパンケーキが出てきました。パクッと一口でいただきます。
ああ、ヘヴン〜。塩味は薄いのですが、なんと濃い味でしょうか。
その次にやってきた、これ、何だと思います?
自家製のイースト菌でパンを発酵させているのです。隣りは、今日作ったバターだそうです。もちろんお店の自家製。
「私たちのパン」を眺めていると、冷たいスープが出てきました。
トマトのスープなのですが、ただのトマトのスープとはちがいます。なんと40種類のトマトの汁をあわせたものなのです。それに、Bohuslän地方で獲れたカニの肉、フレッシュなディルとディルの汁と酢につけたマスターシードが加えられています。
シンプルで、クリアな味ですが、トマトのこくとマスターシードのぷちぷちした歯ごたえの組み合わせは、複雑です。ひとくちごとに異なる味を発見します。
この味の微妙な深さに感心していると、こんなお皿が出てきました。
「わかった、生牡蠣だ!」と思った方、残念でした。不正解です。
「想像とは違うものがでてきます」とヒントをいただき、蓋を開けると、中はこんな感じ。
オイスターリーフと黄色いペッパーのピクルス、haricot de mer(一種の海藻)、キュウリの花、酸っぱく味つけたキュウリと特製のグレープシードオイル、抹茶で味付けした乳清でポシェしたリーク。牡蠣の香りがするオイスターリーフを使っているところが、創作「牡蠣」なわけです。
たいていの食事は、食べると何をどう使っているのか想像できる私なのですが、これほど推察できない一皿は体験したことがありません。
ほんっとにクリエイティブだと思いました。
次は、さきほどのLangoustineが姿を変えて出て来ました。
ああ、この味は懐かしい...。甘エビと岩のりの香りがします。上の乗っている葉っぱは、北欧の「カタバミ」です。日本のものより大きめですが、あの酸っぱい味がします(子どもの頃に道ばたに生えているのを味見していた私)。味付けは、海の塩。
このレストランは、自分たちの農場で取れた野菜を使っています。私が見た事もないような野菜もありました。野菜を含め、食材の9割以上が、地元の北欧のものだそうです。
次のお皿" Satio Tempestas" に使っているのは、47種類の材料です。その大部分が野菜。
材料の味を引き出す味付けは、人参のポリッジ、ハーブエキス、ナッツ、カリカリに揚げたさかなのウロコ。この魚のウロコがシャキシャキして、野菜の甘さや歯触りを引き出してくれます。夫が最も気に入った一皿でした。
そして、待ちに待ったパンが焼きたてほやほやになって出てきました。写真を撮るのを待ちきれず、夫がこれだけ食べてしまいました。
野菜料理と魚介類が交互に出てきましたが、次も魚介類です。
ノルウェイのTrondheim産のホタテ貝のグリルに、トリュフのサバイヨンソース、ムール貝の汁をつかったソースです。うまみがぎっしりつまった一品です。ホタテ貝は薄く切ってあるので、そのままナイフを使わずに食べることができます。
最後の一切れを食べ終わって、お汁を飲んじゃおうかな...と思った瞬間に、給仕の方が、すっと現れ、出汁を注ぎ込みました。右の海藻とワイルドマッシュルーム、魚の卵(どの魚か不明)を加えていただきます。
次は、面白い調理法のあんこう(monkfish)です。自家製のブタの脂にひたして、低温で長時間焼いたものです。それも魚の体温から1℃ずつ高い温度に上げて行くというもの。弾力があるのにベルベットのようなテクスチュアです。
若い玉葱の中に入っているのは、「ジャパニーズパセリ」のソース。店が運営する農場で育てたものですが、日本種なのですね。香りが強いのだそうです。
コース中間で、口直しに出て来たのは、北欧特有のオレンジ色のローワンベリーとディスカバリーアップルのシャーベットです。紅茶のフレーバーが加えられています。酸っぱさが効いたさわやかな味。
いよいよ肉コース。今夜のメニューは、Vaxjoの森でとれた鹿肉(venison)です。目の前で表面を焦がし、それをタルタルステーキにして持って来てくれました。あまりにも美味しそうだったので、写真撮るのを忘れて、ついうっかり一口たべちゃいました。しっぱい、しっぱい。タルタルステーキの上に乗っているのは、魚の卵です。そして、カリカリに揚げたオニオン。白いのは、北欧の薫製うなぎとサワークリームを使ったソースです。混ぜて食べます。
次に出てきたのは、鹿肉のローストに、ジュニパーの実、スウェーデン産のかたつむり、ブラックキャベツとタイムの花、ブルーベリーとクロウベリーという、鹿がふだん食べているものだけを使った一皿です。よく考えると、ちょっと残酷っぽいクリエーションですが、とても美味しかったです。
楽しい夕食も、いよいよエピローグです。
最初のデザートは、なんとgirolle(あんずたけ)のピクルスを使ったアイスクリームです。苦手なキノコがデザートに出てきて、夫はびっくり。すぐに私にキノコを送りこみましたが、私は楽しませていただきました。あんず、カカオ、菜種油も入っています。微妙な味であることは確かです。
次のデザートは、オーブンで焼いたヤギのミルクのアイスクリームです。カリカリしたトーストがかかっています。以前から試してみたいと思っていたラベンダーの香りが使われています。ラベンダーをデザートに使うのは私の好みではないことを確認しましたが、大胆な冒険が楽しいアイスクリームでした。
一緒に出て来たのは、グミ科のseabuckthorn ( シーバックソーン )という黄色い実と人参を使ったデザートで、スプーンで掘って食べるのです。ほどよい甘さと酸っぱさ、そして北欧の森と土を感じさせる香り...これは、文句なしに美味しかったです。
この夜のワインリストです。
Henriot Millésimé, 2002
Martelet de Cherisey Meursault-Blagny 1er Cru " La Genelotte" 2008, Bourgogune
Chateau de Beauregard, Puilly-Fuisse " Vers Gras " 1996 Bourgogne
Domaine Michel and Stephane Ogier Condrieu "La Combe de Malleval" 2009 Rhone,
Domaine Clusel-Roch Côte Rôtie Les Grandes Places 2001 Magnum, Rhone
Fritz Haag, Brauneberger Juffer Sonnenuhr Riesling Auslese 2010, Mosel
行ってみたい方が気になるのが、お値段だと思います。サイトでは、「Food: 1695 SEK Beverages: 1495 SEK」とありますが、これに25%のサービス料が加わりますので、ひとりあたり4000クローナになります。それにチップを加えると...今徹底的に弱いドル換算では、2人で1,200ドルを超えます。でも、円は強いので、今がチャンスかもしれませんね。
財布と体重のリハビリのため、わが家は、当分、食事を「ミニマリスト」にしたいと思います。
ご回答ありがとうございます。
色々な方の評価を呼んでいると、ワインとのカップリングを選んでいる方が多いようだったので心配になりましたが、ソフトドリンクの方もいらっしゃったのですね。
妻と私はいつも飲んでもハーフボトルです。
飲める方がうらやましいです。
服装も正装厳守ではなくて助かります。荷物が減ります。
5月の予約はほぼ満席でしたが、昨日無事に予約をしました。
やはり、実際に行かれた方のご意見は大変参考になりました。
ありがとうございました。
投稿情報: フミオ | 2012年5 月 5日 (土) 07:05
フミオさま
スーツでなくても、スタイリッシュカジュアルで十分だと思います。一応夫はジャケットは着ましたが、ノーネクタイでした。
ビジネスの人はスーツでしたが、老夫婦のご主人は、カジュアルなジャケット。若い女性グループはカクテルドレスを着ていましたが、ちょっと着飾り過ぎの雰囲気でした。
料理のコースはあちらのおまかせで、私たちがとったワインカップリングとそれなしの2つのチョイスです。私たちが食事をしているときに、お酒をとらずにソフトドリンクだけのグループもいました。
ですから、最初にあまりお酒がのめないので、グラスワインだけにしたいことを告げ、ワインリストかsuggestionをしてもらうといいと思います。
飲めない食通は沢山いますから大丈夫ですよ。
それよりも、予約はお早めにね。15席くらいしかないので、すぐ満席になります。
とってもクリエイティブで、世界で20位になったのも納得できます。また行きたいお店です!
楽しんで来てくださいね。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2012年5 月 4日 (金) 16:42
はじめまして。
このレストランについて検索していたらこちらのブログにたどり着きました。
今月夫婦で行く予定です。
もしご迷惑でなければ幾つかご質問させて下さい。
・料理はコースで2種類のみとガイドブックに書いてありました。
私と妻はあまりお酒が飲めないのですが、食前酒にグラスワインをたしなむ程度でも許される雰囲気でしょうか。
・服装は男性はスーツ限定でしたか?
フランスに住んでいるのですが、地方の星つきレストランでは、必ずしもスーツ限定というわけではないので、
ご参考までにご回答頂ければと思います。
お写真のお料理とても美味しそうですね!今から楽しみです。
投稿情報: フミオ | 2012年5 月 4日 (金) 16:29