ものすごく久々なので、「顔ぶれがどんなに変わっているかな」と楽しみしていたのですが、がっくり。「だからNYタイムズ紙ベストセラーは嫌なのよ」を再体験しました。ほんと、くだらない本ばかり。くだらない本のほうが売れるだけのことかもしれませんが。
15位まで見ても、日本人の方におすすめできるのは5冊だけ。もっと良いノンフィクションは沢山出てるのですよ。
それから、ある出版社の人から最近すごく面白い話を聞きました。大手チェーンのバーンズ&ノーブルが店頭で押すと、それにつられて買う人が多いので、たいていニューヨークタイムズ紙ベストセラーに入ります。でも、それを決めるのはたった一人の人物だというのですよ!Amazon.comのベストセラーリストとかはちゃんと見ているらしいのですが、ひとりでこの広いアメリカの地域性から何から把握するのは無理でしょう。道理でこれまでムカつく選択や合理性のない選択が多かったわけです。唖然…そして納得。
さて、肝心のベストセラーリスト(ノンフィクション・ハードカバー編)です。
読む価値があるものだけ★マークをつけました。手に取るだけで時間とエネルギーの無駄だというひどいものはマークです。
1 . LIBERTY AND TYRANNY
Mark R. Levin(Threshold Editions, $25.)
保守派のトークショー司会者による本。いつもそうですが、大統領が共和党のときにはリベラルな本が売れ、大統領が民主党になると保守派の本が売れます。この本は相当長い間しつこくトップに入っています。
★2. OUTLIERS
Malcolm Gladwell (Little, Brown, $27.99.)
2008年末の発売から今までずっと売れているというのは相当なものです。既にGladwellは次作を用意していて今年中に出る予定だというのですから、脱帽。爆発ヘアスタイルに魅了されるファンも。内容は洋書ファンクラブの書評をどうぞ。
3. HORSE SOLDIERS
Doug Stanton. (Scribner, $28.)
良いとか悪いとかは別として、2001年の同時テロ直後にタリバンと闘ったアメリカの特別騎馬部隊の話を日本人が読む必要はあまりないように思いますので。
4. RESILIENCE
Elizabeth Edwards. (Broadway, $22.95.)
2004年と2008年の民主党大統領予備選の候補だったジョン・エドワーズの妻の回想記。妻が乳がんで闘病中にジョンがキャンペーンで雇ったフリーランスの女性フィルムメーカーと不倫をしたことが明らかになり、そのせいですごく売れてます。余談ですが、このお相手、実は80年代にヒットしたJay McInerneyのStory of My Lifeの主人公のモデルになった女性だそうです。この本にはそんなこと書いてないようですが、「えー!あんなメチャクチャなことしてた子がちゃんと生きのびてたの?」と異なる意味で興味を抱いてしまいました。
5. THE GIRLS FROM AMES
Jeffrey Zaslow. (Gotham, $26.)
良し悪しは別として、アメリカのど真ん中の田舎の女性たちの友情のノンフィクションなんて、日本人には興味ないでしょう。
6. MY REMARKABLE JOURNEY
Larry King with Cal Fussman. (Weinstein, $27.95.)
トークショーの化石、Larry King Liveのラリー・キングの回想録(?)。数え切れないほど結婚と離婚を繰り返した彼が80歳を越してゴーストライターを使って書いた暴露本にしては、ごく薄。それほど退屈な人生だったの?それなのに28ドルもするわけ?どうして私がラリーに興味を持たなくてはならないの? と、いくつもの意味で無視するべき本。
★7. ALWAYS LOOKING UP
Michael J. Fox. (Hyperion, $25.99.)
若年性のパーキンソン病にかかったマイケル・J.フォックスの執拗なまでの楽観性は、読む人を元気付けてくれる。
8. LOSING MUM AND PUP
Christopher Buckley (Twelve, $24.99.)
保守派で有名なWilliam F. Buckleyの息子で、映画Thank You For Smokingの原作者のChristopher Buckley が両親を思い出す回想録。私はときおりChristopher Buckleyの軽くてシニカルな本を楽しみますが、2冊連続では読めません。アメリカでは父も息子も有名なので売れていますが、日本人には無意味でしょう。
★9. HOW THE MIGHTY FALL
Jim Collins (Jim Collins/HarperCollins, $23.99.)
なぜ大企業がつぶれるのか?今の時代にちょうどあってますね。でも、「可も不可もなし」という感想が多いようです。
10. THE END OF OVEREATING
David A. Kessler. (Rodale, $25.95.)
肥満するアメリカ人のための本。冗談抜きに、都会以外のアメリカに住んでいると太ります。
11. A BOLD FRESH PIECE OF HUMANITY
Bill O’Reilly. (Broadway, $26.)
私が大嫌いな保守派のフォックスニュース番組の司会者。保守派であることは別にけっこうなことなのですが、事実に基づかないことを事実としておおっぴらに話すことと、インテリのふりをして知識がないところが嫌い。それよりもっと嫌いなのは、自分がすごい奴だと本当に信じているらしいところ。つまり、「嫌いな男性のタイプ」なんですよ。
12. ARE YOU THERE, VODKA? IT’S ME, CHELSEA
Chelsea Handler. (Simon Spotlight Entertainment, $24.95.)
Stand-up comedianとはアメリカ版漫才師のこと。そのチェルシーによる爆笑エッセイでOutlierほどのロングセラーです。でも日本人にはジョークが伝わらないと思います。
★13. COLUMBINE
Dave Cullen (Twelve, $26.99.)
コロンバイン高校での銃乱射事件の真相に迫るもの。ずっと興味を持っているのですが、暇がなくて読んでいません。そのうちぜひ。
14. UNFINISHED BUSINESS
James Van Praagh. (HarperOne, $24.99.)
アメリカで有名な心霊師の本です。沢山本を出していますから、たぶん豆腐のおからのようなものでしょう。
★15. THE HOUSING BOOM AND BUST
Thomas Sowell. (Basic, $24.95.)
アメリカの不動産業がいかに崩壊してアメリカの経済そのものを崩壊させたかを説明する本。読者評価は良いようです。
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