作者:Kate Atkinson
2004年初刊
ジャンル:ミステリー/純文学
Whitbread賞受賞作「Behind the Scenes at the Museum」の作者Atkinsonの第4作「Case Histories」は、一応ミステリーということになっているが、純文学として読むべきだろう。
離婚した元警官のJackson Brodieは、私立探偵として3つのcold case(迷宮入り事件)の調査に取り組む。中年の2人の姉妹から依頼されたのは、家族のみなから愛されていた末っ子のOliviaが3歳のときに行方不明になった事件だった。2つめのケースは10年前に起こった弁護士の娘の殺人事件で、3つめは斧で夫を殺した妻の妹からの依頼で、姪を探してほしいというものだ。
これらのケースにJacksonは自分の過去を重ね、気がすすまないながらに調査をしてゆく。家族内の秘密、崩壊した家族、過去から抜け出せない人々、など人間の悲しい性をAtkinsonは独自の不思議なユーモアに満ちた口調で語ってゆく。
スティーブン・キングが「Not just the best novel I read this year, but the best mystery o the decade…」と評しただけあって、読みごたえがある。
●読みやすさ ★★☆☆☆
ミステリーとして読むと、突然視点や場面が変わるのに混乱し、苛立つかもしれませんので要注意。「純文学」として読むと、ミステリーの部分がプラスになって読み進めやすく思えるでしょう。
決して難しい言い回しを使っているわけではありませんが、風変わりなユーモアに満ちたAtkinsonの文体には、入り込みにくいものを感じるかもしれません。けれども、「Behind the Scenes at the Museum」に比べると、ずっと読みやすい作品です。Atkinsonに興味がある方はこの本から始めることをおすすめします。
●ここが魅力!
なんといってもAtkinsonの魅力は、風変わりなAtkinsonワールドです。
殺人、近親相姦、といったおぞましい話題を扱っていながらも、彼女の語り口調は風変わりなユーモアを失いません。しかも登場人物がみな変人ばかり。変人ですが、けっして嫌いになれないのです。
痛み止めの薬をたくさん飲んでから歯にドリルで穴をあけられるような感じのミステリーです。
●アダルト度 ★★★☆☆
殺人、近親相姦、カジュアルなセックスというテーマを扱ってはいますが、生々しい表現はありません。
●この本を楽しんだ方にはこんな本も……
「When Will There Be Good News?」by Kate Atkinson
「Behind the Scenes at the Museum」by Kate Atkinson
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