著者:Mary Cubica
ハードカバー: 352ページ
出版社: Harlequin MIRA
ISBN-10: 0778316556
発売日: 2014/7/29
適正年齡:PG15(性描写はないけれど、性的な話題あり)
難易度:中級レベル(登場人物は多いが、すべて一人称の語り)
ジャンル:心理スリラー
キーワード:誘拐、記憶喪失、ストックホルム症候群、ミステリ、ラブストーリー
2014年Goodreads Choice Award ミステリ&スリラー部門最終候補
シカゴの有名な判事James Dennettの末娘Miaは、バーで出会った若者のアパートについていく。Miaにとっては行きずりの情事のつもりだったのに、若者はMiaには手を触れずに車で連れ去る。
OwenとMiaに名乗った若者(本名はColin)は、暗黒組織の男から彼女を誘拐して手渡すために雇われたことを告白する。しかし、実際にMiaに会ったColinは、彼女が殺されることを予想し、命を守るために誰もその存在を知らないミネソタ州の山小屋に二人で籠城する。
Mia, Eve, Gabe, Colinの四者の視点から事件を説明していくThe Good Girlは、ハーレクイン社のインプリントMIRA*から出版されているが、本格的な心理スリラーである。ラブストーリーは含まれているが、「ロマンス」ではないし、いわゆるラブシーンもない。今春のBEAでも出版社が派手にPRしていた「イチオシ本」で、実際にGoodreadsのChoice Awardsでミステリとスリラー部門の最終候補にもなった。
一昨年話題になった『Gone Girl』とよく比較されるが、まったく違う。
Gone Girlは本当に予想できない展開だったが、このThe Good Girlでは、どんでん返しはさほど「どんでん返し」ではない。ミステリを読み慣れている人は最初から最期の部分が予想できる。
この作品の優れたところは、そこではなくて、「ストックホルム症候群」が生じていくプロセスをうまく表現していることであろう。その点で、私はGone Girlではなく、Stolenを思い出した。
The Good Girlは、読み始めたら最期まで読みきりたくなるページ・ターナーである。その点では非常にお薦めだが、ひとつだけ気になったのは背後にある人種差別的な発想である。出版社はそこのところにもう少し敏感になるべきではないかと思った。
*ハーレクイン社のインプリントMIRAからは、以前から本格的なミステリ、スリラー、ファンタジー、SFなどが刊行されている。また、ウォール・ストリート・ジャーナルのNew Corpが今年ハーレクイン社を購入しており、News Corpが所有する大手出版社Harper Collinsとの今後の展開が興味深い。
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