著者:Cary Elwes
ハードカバー: 272ページ
出版社: Touchstone
ISBN-10: 1476764026
発売日: 2014/10/14
適正年齡:PG(映画を観た人なら小学生でも大丈夫な内容)
難易度:中級
ジャンル:回想記(カルト的になった映画製作にまつわるメモワール)
キーワード:The Princess Bride、プリンセス・ブライド・ストーリー 、Cary Elwes(ケイリー・エルウェス)、William Goldman(ウィリアム・ゴールドマン)、Rob Reiner(ロブ・ライナー)、Buttercup & Westley、Rob Reiner, As You Wish
ロブ・ライナー監督の『The Princess Bride』は不思議な歴史と魅力を持つ映画だ。
原作者のWilliam Goldman(ウィリアム・ゴールドマン)は、ハリウッドで有名な脚本家で、『明日に向って撃て! :Butch Cassidy and the Sundance Kid(1969)』『ステップフォードの妻たち :The Stepford Wives (1975)』『華麗なるヒコーキ野郎:The Great Waldo Pepper (1975)』『大統領の陰謀 :All the President's Men (1976)』『マラソンマン :Marathon Man (1976) 』といったヒット作を手がけてきた。
そんなGoldmanが1973年に出版した小説『The Princess Bride 』(拙著『ジャンル別 洋書ベスト500 』にも入っている)のファンは多く、当然のごとく多くの人が映画化しようとした。けれども、この本は、あまりにも変わっていて原作の魅力をそのまま伝えられず、手を出した人が次々にあきらめていた。
そのGoldmanを説得したのが、かのカルト的名作『This Is Spinal Tap』と『Stand By Me』を撮った名監督のRob Reinerだったのだ。
原作の魅力をあますことなく伝える素晴らしい映画になったのだが、問題は「どのカテゴリーにも当てはまらない」ということだった。子供対象のフェアリーテイルでもないし、大人用の喜劇でもない。映画配給会社がどうプロモーションしていいのかわからず、まったくひどいPRをしたものだから商業的には失敗した。
ところが、ビデオThe Princess Bride が発売されてからファンの間でジワジワと広まり、いつの間にかカルト的な人気を持つ「クラシック」になったのである。(本書にも出てくるが、ファンの中にはヨハネ・パウロ二世、ビル・クリントン、トム・ハンクスなどもいる)
実際に観ていただければ分かるけれど、おかしくて、ロマンチックで、楽しくて、胸が温まる。フェアリーテイル、冒険物語、ロマンス、コメディの全部が詰まっていて、子供も楽しめるし、大人は別の意味で楽しめる。そして、何よりもquote(引用)したくなる台詞が山ほどあるのだ。
有名な台詞の例をあげると......;
Westly(to Buttercup): As you wish.
Vizzine:Inconceivable!
Inigo Montoya: HELLO! MY NAME IS INIGO MONTOYA! YOU KILLED MY FATHER! PREPARE TO DIE!
Miracle Max: Sonny, true love is the greatest thing, in the world-except for a nice MLT – mutton, lettuce and tomato sandwich, where the mutton is nice and lean and the tomato is ripe. They’re so perky, I love that.
(有名な闘いのシーン)
Inigo Montoya: You seem a decent fellow. I hate to kill you.
The Man in Black: You seem a decent fellow. I hate to die.
出演した俳優たちが、ファンからこういった引用で呼びかけられるようになったのは映画館の上映が終わってからずいぶんたってからだった。そういう不思議な現象を含め、映画が作られた経緯と、その撮影秘話を活き活きと描いているのが本書『As You Wish』である。
著者は、主役Westleyを演じたCary Elwesで、タイトルのAs You Wishは、農場の貧乏な若者だったWetleyがButtercupに愛を伝えるために口にしたたったひとつの台詞である。
今年のBEA(Book Expo Amrica)でElwesが本書発売に先立ってトークイベントをしたので行ってきた。何時間も並んでいるファンを見ると、私の年代から大学生までファン層が幅広い。そして、Elwesはファンサービスが素晴らしく、今でもWestlyのように魅力的だった。
驚いたのは、Elwesのモノマネの上手さである。その魅力がオーデオ版の『As You Wish』であますことなく発揮されている。
私は写真を見たいのでハードカバーをまず購入したけれど、Audibleも購入して正解だった。Elwesの読み方は最高だし、監督のロブ・ライナーや共演のクリストファー・ゲスト、ロビン・ライト、マンディ・パティンキンなど総出演なのである。
The Princess Brideを観たことのない人にとっては無意味な本かもしれないけれど、ファンなら絶対に楽しめること間違いなし。それもAudibleがお薦めである。映画をまだ観たことのない人は、ぜひお薦めする。私はこれまで十回以上観たけれど、また観たくなった。
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