著者:Maggie Stiefvater
ハードカバー: 357ページ
出版社: Scholastic Press
ISBN-10: 0545654572
発売日: 2014/07/01
適正年齢:PG15(高校生以上、マイルドな性的シーン、ドラッグの話題あり)
難易度:やや難しめの中級(詩的な文章で語彙も多いが、ストーリーはわかりやすい)
ジャンル:ファンタジー(パラノーマル)/YA/ロマンス
キーワード:werewolf(狼人間)、longing、ロック、胸焦がれるラブストーリー
音楽と詩を愛する狼少年のSamと、幼い頃に狼に噛まれた少女Graceの哀愁に満ちたYAファンタジー『Shiver』三部作(のちにThe Wolves of Mercy Fallsシリーズになった)は『Forever』で完結したが、これは、シリーズの脇役として登場したColeとIsabelを主人公にした読み切り。
『Shiver』三部作の最大の問題は、一部で完結しておくべき本が三部に長引いたことだ。たぶん、売れる本を三冊出したいという出版社の希望だろう。最近のYAファンタジーは全部三部作だから。同じようなことの繰り返して退屈になったし、最終巻『Forever』の「読者自身が決めてください」という文学的なエンディングも評判が悪かった。(どうなったのか知りたい読者は、この本を読めば想像がつく)。
だが、今回の『Sinner』は、三部作とはペースも雰囲気もまったく異なる。
『Shiver』の三部作は静かで切ないラブストーリーで、主人公のSamとGraceは大人の犠牲者の「良い子」たちだった。けれども、彼らと命運を共にすることになったColeとIsabelは、ゴージャスだけれど、自意識過剰で、身勝手で、すぐに周囲の者を傷つけてしまうタイプだ。
『Sinner』では、Bad boy代表のColeがIsabelを取り戻すためにLAにやってくるが、根本的にロック・スターの性格は変わっていないので人々を傷つけてきた過去に飲み込まれそうになるし、Isabelのほうも自分の性格の悪さに嫌悪感を覚えつつ、変えることができない。好感を抱ける主人公たちではないが、ハラハラドキドキ、胸キュンのエンターテイメント性では「The Wolves of Mercy Falls」のなかでもっとも優れているといえるだろう。
著者Maggie Stiefvaterを大人気作家にしたのは『Shiver』三部作で、ティーンの少女にはとても人気がある。だが、彼女の作品を全部読んでいる私には一番退屈なシリーズでもある。
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今年のBEAでStiefvaterに会って『Sinner』のARCにサインをしてもらったとき、『ジャンル別 洋書ベスト500』に彼女の作品を載せたことを伝えました。
どの作品か尋ねられたので、「迷ったのですが、ほかにない作品だということで『The Scorpio Races』にしました」と答えると、Stiefvaterは嬉しそうに「ありがとう!」と言い、それからいたずらっぽく微笑んで「では、あなた自身が一番好きな作品はどれ?」とさらに質問してきました。
「The Raven Boysですね。絶対に!(Definitely!) あなたの才能が見事に開花している」と情熱を込めて言うと、Stiefvaterはとても満足そうな笑みを浮べました。彼女がこの新シリーズを自分でも最高作品だとみなしているのではないかと感じました。
その後二人で、両手をしっかりと握り合い「お互いに頑張りましょう」といった感じでお別れしたのでした。
ホントに素敵な方でした。
コメント
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