著者:Heather Demetrios
ハードカバー: 480ページ
出版社: Balzer + Bray
ISBN-10: 006231856X
発売日: 2014/10/7
適正年齢:PG 15(高校生以上、際どい描写はないが、性的な話題あり)
難易度:中級レベル
ジャンル:YA(ヤングアダルト)/ファンタジー/ロマンチックファンタジー
キーワード:Jinni(ジーニー)、Love triangle(恋愛三角関係)、人身売買、階級制度、革命
人間界とは別にあるJinni(イスラム教の魔神)の世界には、強固な階級制度があった。だが、革命が起こり、古代の魔力を持つ支配者階級は一人を覗いて全員が殺害されてしまう。唯一生残った少女のNaliaは、地下組織に捕らえられ、奴隷として人間界に売られてしまう。
Naliaを買った主人のMalekは、政界から暗黒社会まで権力を行き渡らせている残酷な男だ。三つの願いを叶えてやればNaliaは自由になれるのだが、Malekは三つ目の願いをしようとしない。豪邸で美しいドレスを与えられていても、Naliaの身分は奴隷である。Malekに反抗すると、鉄の毒が塗られた小さな壷に何ヶ月も閉じ込められてしまう。手首についた美しい金の腕輪と壷の魔力が、NaliaをMalekに繋いでいて逃げられない。
そして、突然優しくなったMalekに対するNaliaの複雑な感情は、ストックホルム症候群のようなものなのか?それとも、もっと深い意味があるのか?
YA(ヤングアダルト)のサブジャンルでは、バンパイア、狼男、天使と悪魔、ディストピア......と流行が移り変わってきたが、いずれも読み過ぎると飽きる。また、流行ると出来が悪い類似品も増える。そんな情況での、Jinniを登場人物に使った本書は、「気軽に楽しむ本」として期待以上に良かった。
Nalia, Malek, Raifの三角関係にはいろいろな伏線があるので、今回一応落ち着いても、三部作のあと二部でいろいろありそうなことは予想できる。
階級制度、人種差別、人身売買という現代社会の問題も、物語に組み込まれているのも良かった。特に人身売買の問題については、著者自身が「実際の人身売買はセクシーなマスターに囚われて、美しいドレスを着るようなものではない」と書き、ブログで人身売買のサバイバーたちを支えるNomi Networkを支援していることを語っている(そこに寄付すると本を送ってくれるらしい)。
YAファンタジーではお決まりになっているように、登場人物が全員美しく、それが私には少々気に入らないのだが、そうしないと売れないので、著者も仕方なくそうしているのだろう。
シリアスなファンタジーを読みたい人にはお薦めできないが、よくあるYAロマンチックファンタジーに飽きている人にはぜひ試していただきたい作品。
Poison StudyやDaughter of Smoke and Boneファンには特にお薦め。
*10月発売予定で、私が読んだのはARC。
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