著者:Martha Wells
ペーパーバック: 278ページ
出版社: Nightshade Book
ISBN-10: 1597802166
発売日: 2011/2/22
適正年齢:PG15(性的な話題は多いが、その詳細な描写はない)
難易度:上級レベル(ファンタジーを読み慣れている必要あり)
ジャンル:ファンタジー(High Fantasy)
キーワード:High Fantasy, Secondary world, Raksura,冒険、ロマンス、ドラゴン
Moonが住んでいる"The Tree World"では、空、陸、水中の3つの場所それぞれに多様な生物が生息している。
幼いときに母と兄弟を失った孤児のMoonは、自分の素性を知らない。ふだんの彼は陸の種族とそっくりだが、竜のような身体に変身できる。狩猟をするときにはその姿のほうが楽なのだが、陸に住む種族に混じって暮らしているMoonは飛べることを隠している。同じように空を飛ぶ姿に変わることができるのは残酷な無差別殺戮で知られるFell族だけであり、シェイプシフターだと知られたら村人から殺されるかもしれないからだ。
The Cloud Roadsと下記の2巻を合わせたThe Books of the Raksura三部作は、ファンタジーのサブジャンルである「ハイファンタジー」に属するものである。
ハイファンタジーとは、現実の世界とは異なる世界(secondary world)を舞台にしたファンタジーのことで、Raksuraが住むThe Three Worldの世界そのものがまず面白い。
The Tree Worldには人間はいない。特殊な文化背景を持つさまざまな形態の生物が、点在、あるいは混在している。
主人公Moonが属するRaksuraの社会は、蜂や蟻のようにQueenを中心にしたもので、QueenやQueenの伴侶となるオスのConsortは生まれつき決まっている。Consortに生まれたオスは戦士たちよりも力があるが、魔力も持つQueenのパワーには対抗できない。小国家でのQueenとConsortの関係は、大奥での男女関係が入れ替わったような感じである。ロマンスもあるが、Raksuraの世界での倫理観や価値観は人間とは異なるので、ロマンスも通常のものとは異なる。そこもほかのファンタジーにはない面白さだ。
それぞれに独自の風習を持つ種族が交流しあう複雑な世界を、Moonと一緒に「よそ者」の立場で冒険したり、闘ったり、くよくよ悩んだりするのが楽しくて、読み終わるのが寂しかった。
私は最近偶然見つけて「なぜ、これまでこの作品を知らなかったのか!」と唸ったのだが、そういう人はけっこういるかもしれない。
最近流行っているファンタジーに飽きているSFやファンタジーファンに、ぜひお薦めしたい作品である。
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