本ブログでご紹介した本が邦訳されることが増え、とても嬉しく思っています。それらの本をこれまでは『渡辺由佳里のひとり井戸端会議』のほうでお知らせしていたのですが、今回のMockingbirdはこちらでお知らせすることにしました。
翻訳企画は、多くの場合「賞を取った作品」とか「海外でベストセラー」、「超有名作家(有名人)が書いたもの」といった「売れる」という見込みで生まれますが、本当に素晴らしい翻訳書は、その本に情熱を抱いている人たちが企画し、その本を理解している人、愛している人が翻訳したときに生まれると私は思っています。
表紙といい、中身の日本語といい、原作そのまあ、いや、もしかすると原作を超えた素晴らしい作品になっているのではないでしょうか。
主人公のケイトリンはアスペルガー症候群(2013年のアメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)では、アスペルガーの診断名が消える予定で物議を醸している)の少女なのですが、周囲の人々と彼女の思考回路のすれ違いが、原書のユーモアを失わず、すばらしく翻訳されています。翻訳者のニキ リンコさんもアスペルガー症候群なのだそうです。
そのリンコさんの「訳者あとがき」の次の文には、何度も頷いてしまいました。
みんなの近くにケイトリンや私に似た子がいたら、友だちになってあげてねとは言いません。そりゃ、たまたま気が合ったらなればいいけど、無理に友だちになるなんて、無理でしょう?
友だちにならなくても、クールに共存すればいいんです。
深刻なテーマを扱っていますが、ケイトリンの(ふつうの人には不思議な)思考回路に吹き出すことが何度もあります。そのうちに、だんさん「なるほど、そういう思考回路なんだったら、仕方ないよね」と受け入れることができてきます。
子どもがいる人も、いない人も、「読んで良かった」と思える本ですから、ぜひどうぞ。
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