Maggie Stiefvater
ハードカバー: 409ページ
出版社: Scholastic Press
ISBN-10: 0545424925
ISBN-13: 978-0545424929
発売日: 2012/9/18
YA(ヤングアダルト)/ファンタジー/英雄伝説、オカルト、冒険/三部作(The Raven Circle)
2012年これを読まずして年は越せないで賞の児童書部門候補(渡辺推薦)
Blueが子供の頃から数えきれないほど聞かされたのは、「真実の愛の相手にキスをしたら彼は死ぬ」という未来の予言だった。
彼女の母と友人たちは占いや予言で生計を立てており、霊能力がないBlueも(その年に亡くなる者の霊が教会を通り過ぎるという伝説で知られる)St. Mark's Eveには手伝いをしなければならない。そこにいるだけで彼らのパワーを増幅するユニークな能力があるからだ。
これまで霊を一度も見たことがなかったBlueは、初めて生霊を目撃し、その少年の名前を訊ねる。有名な霊能力者の叔母Neeveは、霊能力がないBlueが彼の霊を見ることができたのは彼が真実の愛の相手か、あるい彼を殺す運命かのどちらかだと予言する。
その少年Ganseyは、その地方にある有名私立男子校Aglionbyの生徒だった。学校のマスコットRaven(大ガラス)にちなんでRaven Boysと呼ばれるAglionbyの生徒たちは、大金持ちの親から田舎の名門校に送り込まれている鼻持ちならない連中だ。高級車を乗りまわし、低所得者が多い田舎の人々を見下ろす彼らを徹底的にさけていたBlueだが、運命がGanseyと彼の友人グループを彼女に引寄せる。
Ganseyの尊大な態度に反感を抱いていたBlueだけれど、奨学金を得ている貧乏学生のAdamを通じてGansey, Adam, Ronan, Noahという4人組のRaven Boysと関わるようになり、母の命令に背いて彼らの探求を手伝うことを決意する。
4人組のリーダー格Ganseyが長年探し求めているのは、ウェールズの英雄Owain Glendowerが埋葬されている場所だった。伝説では彼は死んだのではなく眠っているだけで、彼を起こした者はそれに見合う報酬を与えられるのだという。Ganseyは、これまで集めた情報からこの町Henriettaがその場所だと確信し、そのためにわざわざAglionbyに転校してきたのだった。
しかし、Ganseyが知らなかったのは、この壮大な冒険が、取り返しがつかないほど危険なものだということだった。
● ここが魅力!
ここのところ、「ファンタジー」とは名ばかりで甘っちょろい「ロマンス」のYAファンタジーが多くて、しかもけっこう人気があって「が〜っ」とフラストレーションをつのらせていたのですが、ようやくYAファンタジーらしいファンタジーを読めました。
やはりMaggie Stiefvaterは偉いです(彼女の他の作品はこことここでも紹介しています)。
the Raven Boysにもロマンスの予感のようなものはありますが、それよりも「友情もの」の要素が強い作品です。少年それぞれの人物造形がよくできていますし、複雑な家庭環境や過去に脅かされる少年の友情が、Blueが加わることで微妙に変化してゆくのも(他のファンタジーよりも)本物らしさがあります。Blueが友だちのひとりになっているのも読んでいて楽しかったです。
女性の作者なのに、少年たちの心境がよく描かれているのにも感心しました。
ファンタジーというよりも、英雄伝説、幽霊、ミステリー、冒険、友情、などのテーマがいっぱい詰まった、とても読み応えある青春小説のような感じです。第一部のこの作品では、ひとつの事件は解決しますが、多くの謎は残されたままです。
ところで、St. Mark's Eveは実際にある言い伝えですし、Owain Glendowerは実存の英雄ですし、彼の死が明らかになっていないというのも事実です。
続編が待ち遠しくてなりません。
すでにNew Line/Warnerが映画のオプションを購入したそうです。映画化決定ではありませんが、映像にできそうな感じ、たっぷりです。
下は作者自身が作った本のトレイラーです(彼女はアーティストでミュージシャンでもあるのです!)
●読みやすさ 普通〜やや読みやすい
YAファンタジーは通常の文芸小説に比べると読みやすいです。
Stiefvaterは文章力がある作家なので、ふつうのYAファンタジーに比べるとストレートな英語ではありません。けれども十分読みやすいと思います。
●おすすめの年齢 中学生以上
ロマンスの予感のようなものはありますし「キス」についての言及はありますが、性的な場面はありません。
続編については保証できませんが、この作品のみでしたら小学校高学年でも大丈夫かもしれません。けれども、怖がりの子や悪夢を見やすい子にはおすすめできません。
コメント
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