Stephen King
ハードカバー: 864ページ
出版社: Scribner; Original版
ISBN-10: 1451627289
ISBN-13: 978-1451627282
発売日: 2011/11/8
SF/歴史小説/ロマンチックスリラー
日本人には分かりにくいだろうが、「JFKが生きていたら、今のアメリカはどうなっていただろうか?」というのはアメリカ人にとって忘れることができない疑問なのである。JFK暗殺に引き続く、ロバート・ケネディとキング牧師の暗殺、ベトナム戦争の泥沼化は、アメリカにとって暗い時代だった。とくに中高年層のリベラルに、「もし JFKが生きていたら、人種問題はもっと早期に解決していたし、ベトナム戦争も悪化しなかっただろう」と思う人が多い。
このSFは、その「もし」がテーマである。
タイムトラベルでは、未来を変えるようなことをしてはならない筈だが、アルのテストケースでは未来を変えることができた。しかし、アルが本当に変えたかった過去は1963年11月22日のジョンF.ケネディ(JFK)暗殺だった。
歴史では、リー・オズワルドが単独で暗殺したことになっているが、CIA、KGB、アメリカマフィア、イスラエル政府、そしてFBIのフーバー長官の陰謀説は根強く残っている。それゆえ、オズワルドが単独で行動したことを確認するまでは、ただ彼を殺すだけではJFKの安全は保証されない。それを調査しているうちにアルはがんにかかり、暗殺を阻止するまで生き延びることができないと判断して現在に戻ってきたのだった。
アルはジェイクに、自分の代わりにJFKを救うように頼む。
ジェイクが予期していなかったのは、この時代のアメリカと、この時代に住む人々に深い愛情を抱いてしまったことだった。ジェイクは過去にとどまって幸せになりたいが、そこには、数々の問題があった。
●ここが魅力!
キングが最初にこのテーマで小説を書くことを考えたのは、JFK暗殺からまだそんなに経ってはいない頃ということです。けれども、長年かけて歴史書を読み尽くし、考察を繰り返し、歴史学者に「JFKが生きていた場合の最悪のシナリオ」をたずねて書いたことで、ただのSFではなく、非常に充実した歴史小説になっています。
また、58年から63年までのアメリカがとても魅力的に描かれており、ルートビアの描写にむしょうにルートビアが飲みたくなり、グレン・ミラーのIn the Moodでスウィングが踊りたくなります。登場人物ひとりひとりが、まるでそこにいるかのように浮かび上がるのも、キングのすばらしさです。
主人公のヒロイズムさやロマンチックさも、率直に胸を打ちました。
キングは、年を取ってだんだんロマンチックになっているような気がするのですが、私もそういうところがあるので、実にしっくりきました。
●読みやすさ 普通レベル
英語の本を読み慣れている人であれば、読みやすいと感じる筈です。
良質のお酒のように、スムーズに喉を流れて行く感じです。
864ページという長さにひるむかもしれませんが、いったん読み始めると、長さを忘れます。
●おすすめの年齢
セックスシーンとバイオレンスのシーンはあります。けれどもホラーはありません。
高校生以上がおすすめ。
コメント
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