Kate Morton
ハードカバー: 576ページ
出版社: Atria
(2010/11/9)
文芸小説/歴史/ゴシックミステリー
1941年に投函された手紙が1992年にようやく宛先に届く。
ロンドンの小さな出版社で編集をしているEdith(イーディス)は、手紙を受け取った母Meredith(メレディス)の不可解な反応に好奇心を抱く。手紙は、第二次大戦中に母が疎開していたMilderhurst Castle(ミルダーハースト城)に住むJuniper(ジュニパー)という女性からのものだった。「Too late(遅すぎる)」とつぶやいて涙を流した母は、イーディスが訊ねても何も語らない。
手入れがまったくされていない城は荒れ果て、3人の老女がまるで城の亡霊のように暮らしていた。彼女たちは、レイモンドの娘で双子のPersephone(パーセフォニー/パーシー) 、Seraphina(セラフィーナ/セフィー)、そして精神を病んだ ジュニパーだった。村の人は、ジュニパーがこうなったのは、婚約者の Thomas Cavill (トーマス・カーヴィル)に捨てられたからだと言う。ジュニパーは、イーディスを見て「メレディス」と呼ぶ。
トーマス・カーヴィルは、疎開時にメレディスの担任教師だった。彼のことを調べて行くうちにイーディスはさらなる謎にぶつかる。頑に過去を語ろうとしない母には内緒で秘密を探ってゆくうちに、イーディスは児童書Mud Manに関わる80年近い秘密にたどりつく。
●ここが魅力!
Kate Mortonは、これまでにThe House of Riverton, The Forgotten Gardenの2作を出していますが、いずれも私の大のお気に入りです。
この作品でも裏切られませんでした。
3作に共通するのが、英国の古い屋敷と旧家に何十年も隠された複雑に入り組んだ「家族の秘密」とその謎解きです。ゴシックロマンスやゴシックミステリーに必要不可欠な、脳裏に焼き付いて離れない、取り憑かれるような、hauntingな雰囲気がたっぷりです。そして、その秘密には多くの悲劇が含まれています。
登場人物が「嵐が丘」や「ジェーン・エア」について語りますが、作者もきっとそれらの作品に心惹かれて小説家を夢見た文学少女だったのでしょう。だから私が魅了されるのかもしれません。
作中の児童書 「The True History of the Mud Man」が、この作品の鍵として存在しますが、これを読みたくなってしまうほど存在感があります。悪夢を見そうですから、子どもにはたぶんおすすめしませんが...。
私はこの作品をオーディオブックで読み(聴き)ました。Kate Mortonの作品では初めてのことです。
いつもの数倍も時間がかかりましたが、目を閉じて耳をすませると、城の雰囲気がそのまま感じられました。紙媒体を読むと異なる印象だったかもしれません。今度試してみたいものです。
●読みやすさ やや難
非常に美しい文章ですが、難しい表現もあります。状況説明に時間をかける傾向もありますし、文芸小説に慣れていないと入り込みにくく感じるかもしれません。また、けっこう長い本です。
けれども、この手の本が好きな方は、長くてもそこを楽しめると思います。
ゴシックロマンスやミステリーがお好きな方は、ぜひ、お試しください。
●対象となる年齢
性に関する話題はありますが、露骨な表現はありません。
面白さが分かる年齢は高校生以上だと思いますが、「ジェーン・エア」あたりが好きな子であれば中学生でも楽しめるかも。
こんにちは、angelさん。
そうですね。レビューではいまいちな意見が多いですよね。
もちろん前作のThe Forgotten Gardenを超える作品ではありませんが、私は楽しみましたよ。
長々とした説明も、その雰囲気が好きなので楽しめましたし。
「Thirteenth Tale」がお好きだったということでしたら、おすすめします。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2011/03/06 12:06
こんばんは。読もうかどうか悩んでいたんです。イギリスのアマゾンでもチェックしてたんですが、みなさんいまいちみたいで。
でも、この間「Thirteenth Tale」を読んで、ものすごくお気に入りになってしまったので、ちょっと渡辺さんの書評を見て心が動いています。よく似たテーマと御見受けしました。
いつもわかりやすい書評で本を選ぶ時に助けてもらっています。ありがとうございます。
投稿情報: angel | 2011/03/06 07:22