Barbara Michaels (Elizabeth Petersの別名)
1990年初刊
384ページ(マス・マーケット版ペーパーバック)
ミステリー
宝石商の祖父が亡くなり、ビジネスウーマンのMeg Venturiはニューヨークから故郷に戻る。祖父はビジネスをMegに残すが、謎の人物Rileyと宝石店の共同経営者になるというのが遺言の条件だった。祖父のもとで宝石デザイナーとして働いていたRileyは、無口で暗く、Megにつっけんどんな対応しかしない。
独立心が旺盛だが心優しいヒロインのMegは、扱いにくいRileyと一緒になんとかビジネスを回復させようとするが、生命を脅かす事件が続発する。
ヒロインと脇役の魅力、会話のウィット、そしてプロットの面でもページをめくるのが楽しみで、十分「面白かった」と満足できるミステリー。Barbara Michael名でのミステリではたぶんベストのひとつ。
●ここが魅力!
エジプト学の博士号を持っている著者は、Elizabeth Peters名でビクトリア時代英国の女性エジプト学者Amelia Peabodyが主人公のミステリーシリーズを2007年までに19巻出版しています。その他2つのシリーズの合計が10巻、Barbara Michaels名では30巻ほど、という大変多作のミステリー作家です。
彼女の作品はどうやらCozy Mysteryと呼ばれるジャンルに属すようです。
Cozy Mystery(コージー・ミステリー)の定義ははっきりしていませんが、まずプロットと好感の持てる人物描写を重視しており、主人公が素人の女性で、登場人物のキャラクターに親しみを感じやすく、彼女の友達のような感覚で謎解きを楽しめるもの、といった感じでしょうか。シリーズものが多いのもその特徴です。
「印象に残る傑作」ではなく「楽しみのための読書」を求めるとき、それを確約してくれるのがCozy Mysteryの魅力です。このサイトのリストをみると、読みきれないほど沢山のCozy Mysteryがあります。ですから、好きな作家がみつかれば、連続して何冊も読めます。それも良いところです。
●読みやすさ ★★★☆☆
ミステリーとしては難易度が中間程度だと思います。
現代英語ですが、現代的なスラングはないので、その点では読みやすいと思います。
けれども、宝石とか歴史に関する部分で困難を感じるかもしれません。そこで怠けると謎解きが理解できなくなるので、飛ばすわけにはゆきません。
●この本が気に入った方には、
Barbara Michaelsの作品をどうぞ。
Wait for What Will Come
アメリカ人の若い女性がCornwallにある屋敷を相続し、そこを訪ねると不思議な出来事が…。というと、以前にご紹介したThe Forgotten Gardenのようですが、そうではなくちょっとオースティンを連想させるロマンスと不気味な現象が混じったミステリです。The Forgotten Gardenのように傑作ではありませんが、十分「次を読みたい!」と感じさせる佳作です。
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