人生に成功し、幸福に暮らしたければ、生涯通じてしっかり遊ぼう
オリンピック選手が「楽しんできます」と言って非難されたように、日本には「苦しみに耐えて、悲壮にがんばる」者が褒め称えられ、楽しむ者が徹底的に非難される環境があります。それは「好きなことをやる=遊び」への罪悪感があるからでしょう。それほどではありませんが、アメリカにも「遊び」への罪悪感が存在します。
けれども、病院の臨床ディレクターとカリフォルニア大学サンディエゴ校の準教授を勤め、遊びを研究するThe National Institute for Playという非営利団体を設立した医学博士のスチュアート・ブラウンは、「遊び」こそが成功と幸福を決定する最も重要な要因なのだと説きます。
この本でブラウンはカリフォルニア工科大学Jet Propulsion Laboratoryが最近雇った有名大学卒の若いエンジニアたちの問題を例に挙げています。手を使って遊んだことがない優等生たちは、この種の職業に必要不可欠な類の問題解決能力を欠いているのです。また、大量殺人犯について調査するうちに、彼が「遊び」欠乏で育った事実が浮かんだ例も挙げています。
具体的な目標達成に貢献せず、特に実用性がなく、時間の無駄でしかない行為とみなされている「Play(遊び)」ですが、実際には睡眠や栄養ほど人間の健康に重要な要素であり、脳の発達、精神心理的成熟、対人能力や決断力、夫婦関係、幸福感にきわめて大きな影響を与えているのです。ブラウンの科学的な解説と盛りだくさんの逸話には、何度も「そのとおり!」と同感しました。
たとえば、私の周囲で楽しく仕事をしている人たちは遊びも熱心にしています。テニスやゴルフといったスポーツだけでなく、プラモデルを作ったり、コレクションをしたり、絵を描いたり、バードウォッチングのために未開の地に旅したり、演奏したり、とさまざまです。
また、楽しんでいるアスリートも「悲壮にがんばる」アスリートと同じかそれ以上の練習をしていますし、よい成果を上げています。私はオリンピック水泳競技で16歳の若さで4位に入賞したエリザベス・バイセルという選手を7歳のときから知っていますが、彼女は一流の男性スイマーよりもタフな練習を、ひっきりなしにジョークを言いながら遊びのように毎日こなします。彼女の練習には悲惨さなんかちっともありません。エリザベスのお母さんは、娘がスランプに陥ったことがないのは、「楽しくてしょうがない」という態度のせいだろうと私に語りました。
だからこそ私は、ブラウンの説に納得するだけでなく、おおいに応援したくなるのです。この本は成功と幸福の鍵である「遊び」の見方を根本から変えるための本です。
●ここが魅力!
遊びに罪悪感を覚えるためになかなか人生を楽しめずに鬱になっている方、または家族が罪悪感を与えるために遊べず不満がたまっている方には、「楽しんだほうがためになる」と開き直るきっかけを与えてくれます。
そうでない方にも、遊びの大切さをふたたび思い出させてくれるのが魅力です。
●読みやすさ ★★★☆☆
一般的には科学者はわざと難しい英語を書く悪い癖があります。けれどもさすが「遊び」を啓蒙するBrownだけあって、簡潔でわかりやすい文章を書いています。
●アダルト度 ★☆☆☆☆
このような話題に興味がある子であれば中学生くらいからほぼ内容を理解できるでしょう。
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