著者:Jodi Picoult
2008年3月初刊
ジャンル:心理サスペンス/時事問題
Picoultのベストではないが、読み逃したくない作品
Jodi Picoultの本は絶対に読み逃さないことにしている。
それは彼女が娯楽作品を通じて読み手に難しい社会問題を考えさせる天才だからだ。これほど巧みなストーリーテラーはめったにいない。
警官とその継子の少女を殺害した死刑囚のシェイは、死刑執行が迫った11年後に少女の妹に移植用の心臓を提供することを望む。母親は死が目前にせまった娘に憎い男の心臓を与えるべきかどうか葛藤するが、それだけがハードルではない。塩化カリウムで心停止させる通常の死刑では心臓を移植に使うことはできないのだ。
シェイがコンコード刑務所に移ってきてから奇跡が起こり始める。シェイの奇跡は暴力的な囚人たちやタフなガードたちを根本から変えてゆく。シェイをキリストの生まれ変わりと信じて奇跡を求める人々と冒涜者として糾弾する人々が刑務所の外でぶつかる。
陪審員としてシェイの死刑に票を投じたのがきっかけで宗教に身をささげた若い牧師とシェイの望みをかなえるために死刑の方法を変えようと働く若い女性弁護士は、それぞれ異なる葛藤を覚える。
カトリックとユダヤ教の関係や奇跡に対するキリスト教内での宗派の反応の差など、アメリカ合衆国に住んでいないとぴんとこないところもあるだろう。また、いつもの彼女の作品より複雑さと深みに欠けるような気もする。しかし、それでも読み終わった後Picoultの残した疑問について考えこまずにはいられないのは、優れた作品だからだろう。
●読みやすさ ★★☆☆☆
いろいろな登場人物がそれぞれの視点を一人称で語っています。それゆえに読みやすいと感じる人と読みにくいと感じる人とがいるでしょう。私は読みやすいと思います。ただし、アメリカの文化を知らない方にはぴんとこない部分もあると思いますので、★をひとつ減らして3つにしました。
●ここが魅力!
奇跡が次々に起こる部分で興味がだんだんわいてきます。
死刑囚のShayがどんな人物なのかを推測するのもチャレンジです。最後まで興味を失うことなく読め、読み終わった後でも考えさせられる作品です。
●アダルト度 ★★☆☆☆
近親相姦のテーマを扱ったところはありますが、どぎつい描写はなく、中学生くらいから読めると思います。
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コメント
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