著者:Ayn Rand
1957年初刊
ジャンル:フィクション/純文学
アメリカ人と関わる機会がある人なら一度は読むべき本
ロシアからの移民のAyn Randがこの小説を使って布教したかったのは、「合理的な利己主義こそが真の道徳の基準であり、利他主義・博愛主義は極めて非道徳的」だという考え方である。ノーム・チョムスキーが「現代の知識人のなかで最も邪悪なひとり」と呼んだのも納得できる。
この本が出版された1950年代は社会主義・共産主義への反感が強い時代だった。ソビエト連邦の脅威にパラノイアを抱くアメリカには利他主義を批判するこの本を受け入れやすい土壌があったのだ。
最近まで共和党は経済的なエリートの党であった。彼らは「貧しい者は、努力をしないからである。努力して裕福になったわれわれが怠け者の面倒を見ることを強要される福祉対策が社会主義だ。それを支持する民主党を勝たせるとアメリカ合衆国は終わりだ」と信じる。裕福な共和党員の子はこれ以外の見解を知らずに育ち、大学では同じような友人を選ぶ。
だが、社会で異なる思想や経済的背景を持つ優れた人物と出会う機会があった者は、自分の体験からRandの倫理観の欠陥を読みとることができるようになる。学生時代に感動したのに20年後に読んで「ひどい」と感じる者がいるのは、体験が思想を変えたからだろう。
チョムスキー的知識人は強い嫌悪感を覚えるであろうし、グリーンスパン的知識人は強い魅力を感じるだろう。
思想の左右は別として、アメリカ人と触れる機会のある人は読む価値があると私は思う。Randの本に対する相手の反応で、どういう人物かを推測できるからである。これは有用なリトマス紙だ。
英語の難易度という意味ではさほど難しくないのですが、作者がソビエト連邦からの移民のせいか、ネイティブでも読みにくく感じる文章です。ですから、読みにくくても自分のせいだとは思わないことです。
●ここが魅力!
この本が好きなアメリカ人が何を信じているのかを理解するのに最適です。
「合理的な利己主義」とはどういうものか、小説の形で読むほうがわかりやすいですから。
●アダルト度 ★★★☆☆
とくにどぎつい描写はありませんが、影響力を受けやすい子には主人公のDagnyとReardenの性交渉を含めた愛に関する信念は悪影響かもしれません。
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