1976年発売当時の和田誠さんのレビューに「子どもにわかるだろうか、と大人はよく言う。逆なのである。大人にわかるかなあ、と言うのが正しい。」とありますが、まさにそんな感じです。
「さよならペンギン」を読んで、私は娘がプレスクールに通っていた2才から5才までの時期を思い出しました。
お友達が集まって遊ぶプレイデートでおやつを出すと、ジョーク合戦が始まります。一番多いのが"Knock Knock(ノック、ノック:ドアを叩く動作)." "Who's there?(どなたですか?)"というジョークです。でも、3歳児が笑い転げるジョークってのが全然大人にはわからないんです。だって、オチがないのですから。
傍で聴いていてイライラした私は、「それって、こんなジョークでしょ」と次のような例をやってみせました。
「Knock knock(コンコン). Who's there?(どなたですか?) Boo(ブーです). Boo who(ブーって...どなた)? (子供が怪我をしたときに泣く擬音、ブーフーBoo-Hooと同じ発音) Don't cry. It's only a joke(泣かないでよ、ただのジョークなんだから).」
3歳児たちは、笑うどころか無表情に私を見返し、「ジョークの仕方をしらないね」とため息をついてからお手本を披露してくれました。
"Knock knock(コンコン)."
"Who's there(どなたですか)? "
"Tree(木です)."
"Tree who?(木の...どなた?)"
"Tree with leaves!(葉っぱがついてる木です〜!)"
「それじゃあ、ジョークになってないじゃないの〜!」と叫ぶ私を残し、3歳児たちは笑い転げています。
こんなふうに、子どもにしかわからないおかしさ、楽しさ、そういったものがあるのに、いつか私たちは忘れてしまっているのですよね。よく大人が大好きだけれど子どもがさほど面白がらない絵本や児童書ってありますよね。「さよならペンギン」はまったく逆なんです。
それぞれが無関係な、けれども子どもが「これは面白そうな場所だ」と思う場所に、まよいやすいペンギンが次々に飛び込みます。そのはちゃめちゃさ、辻褄がないことに言い訳をする必要がまったくないところが、子どもの世界の絶対の面白さなんです。子ども(と子ども心が残っている大人)は、深く考えたりする必要なく、「これ、すっごく面白い!」とストレートに楽しめます。
湯村さんのイラストの大胆さ、レトロっぽい色や活字がさらに異次元的で自由な空想の世界にぴったりです。
これを持って15年前のあの3歳児たちに会いに行きたいなあ...
そうしみじみ感じた絵本でした。
絵本と「さよならペンギン」グッズはほぼ日でどうぞ。
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