最近「大宮盆栽村クロニクル」というノンフィクションをお書きになった宮田一也さんという方からebookをいただき拝読させていただきました。
大宮の盆栽村の誕生をまるで小説のように語るノンフィクション、という発想そのものにまず感心しました。
私は盆栽にはまったく興味がない素人なのですが、読み進める うちに盆栽村を作った人々やそれを受け継いだ次世代の人々、そしてその時代背景などに自然と関心を抱くようになっていました。それぞれの章のはじめにその年の主な出来事や流行語などが記されているのも「この言葉が生まれたのはこの時代だったのか」などと楽しむことができた作品でした。
大宮に盆栽村を作った人々の歴史、なんてとても大衆受けするテーマではありません。それをあえて綿密に調査して生存者を取材して書くということそのものに私は脱帽しました。
私は現在住んでいる米国の町で、老人の個人史を記録するという企画を何度かたてたことがあります。歴史は有名な人々だけが作るのではないと私は思うからです。無名の人々 が伝える個人史から驚くような興味深い過去を学ぶことができるのですが、彼らが亡くなってしまうともうその歴史を知る術がなくなります。それでけっこう焦ってい るのですが、なかなか先に進みません。
時代を変えるような歴史ではないけれど、貴重な日本の歴史の一部にはちがいない「盆栽村」の歴史を手遅れになる前にこうして書き留めてくれた作者の宮田さんに拍手喝采です。
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