ジェフリー・アーチャーという名前を聞いて即座に「百万ドルを取り返せ(Not a Penny More, Not a Penny Less)」を思い出す人はたぶん私の年代以上でしょうね。もしかしたら洋書読みでも知らない人のほうが多いかも...
あんまり胸を張って威張れることではないのですが、アーチャーは私にとってはなじみ深い存在です(と一人で恥じ入る)。以前「洋書ファンクラブ」でお話ししたように、二十歳そこそこの私が初めて英語で読んでいることを自覚せずに洋書の読書体験を楽しむことができたのが「Not a Penny More, Not a Penny Less」なのですから。また、マーガレット・サッチャーのお気に入りだったアーチャーは、1989年(か88年)に日本企業がサッチャーを招待したときに一緒にくっついて来日しています。私も英国保守党の資金集めのためのブレックファーストに出席したのですが、そのときにけっこうなお金を払って出席しているビジネスマンたちを尻目に、なぜか黒いミニドレスを着ている謎の職業の若い女性のもとへ直行。さすが有名な女ったらしと感心しました(私も当時は若かったけれど、声かけてはいただけませんでしたねー)。
当時はすごく面白かったアーチャーですが、今読んだらたぶん「何よこの表現力は!」と赤面するのではないかと思います。彼の文章力は評論家たちを常に唸らせて(逆の意味で)きましたから。
アーチャーは荒唐無稽な小説のあらすじを上回るカラフルな人生を送ってきました。そもそも彼が「百万ドルを取り返せ」は下院議員だったときに幽霊会社に投資して全財産と議席を失った体験を元にしているのですから。「百万ドルを取り返せ」の爆発的ヒットで経済的にも政治的にも復活したアーチャーは上院議員になりますが、女とカネのスキャンダルが絶えない人で1986年にまたも議席を失います。この頃から彼のスキャンダルにはあまり注意を払っていなかったのですが、2001年に偽証罪で投獄されたときには、「ついに!」と思いました。
でもそれで終わるようなアーチャーではありません。4年の判決だったのに2年で出て来て、さっさと復活。彼の最新作は爆発的に売れただけでなく、映画化も決定しちゃいました。
さらにGuardian.co.ukのRobert McCrumによると、この2年の獄中生活が彼の文章力を向上させたようなのです。
そればかりか、Forsyte Sagaスタイルのエピックを書くアドバンスが18ミリオンパウンドだというのです(これくらいの額になると全然見当つかなくなるけれど30億円くらいなのかなぁ。調べるの面倒なんで分かる人は教えてください)。猫には9つ命があると言われていますが、アーチャーは猫以上にしぶとい奴ですね。感心。
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