拙書「ゆるく、自由に、そして有意義に──ストレスフリー•ツイッター術 」にも登場するインディ系ロックミュージシャンのアマンダ・パーマーは、レーベルとの2年にもわたる争いの末2010年4月に独立しました。そのいきさつは(英語ですが)デイヴィッド・ミーアマン・スコットのブログ記事Web Ink Nowの記事にあります。
レーベルから離れて独立したアマンダは、Amanda Palmer & The Grand Theft Orchestraという自分のバンドを結成し、4年かけて作った新しいアルバムのプロモーションと音楽活動のために、Kickstarterというクラウドファンディングを利用して直接ファンから資金を集めることに決めたのです。当初の目標は30日間で100,000ドルを集めるというものでした(4月のWeb Ink Nowの記事はこちら)。
ところが、昨日5月29日、その額がなんと1,000,000ドルを超えたのです。これはひとりのミュージシャンが単独で集めた最高金額だそうです。
でも、アマンダのクラウドファンディングは「物乞い」ではありません。
1ドル提供すれば音楽のダウンロードができますし、25ドルになるとアート小冊子つきの限定版CDがもらえます。50ドル、100ドル、125ドル...と提供資金が上がるにつれ、熱狂的ファンが手に入れたくなるアート、音楽、ビニール盤アルバムなどのコレクターアイテムがどんどん加わってきます。ボストン、ニューヨーク、ロンドン、ベルリンなどの都市に住む人は、300ドルで少数限定のロックアートショーに参加でき、直接アマンダから豪華(で変わった)プレゼントがもらえます。さらに太っ腹な人は、10,000ドル出せばアマンダとバンドが自宅に来て演奏してもらえるのです。
また、ソーシャルメディアを活用していることで有名なアマンダは、デイヴィッドの取材にこう答えています。
「私はすべてのギグの後でファンに会います。ツイッターのようなオンラインでのソーシャルメディアだけではなく、実生活で直接関わることがとても大切だと思っているのです。実生活でファンに会わないなんて、いかさまですよ。ライブで人に会って一緒に汗をかいて語り合うのが苦手な人が、オンラインで成功するはずがありません。私はファンと触れ合うのが大好きなんです。ライブの後、商品販売テーブルでおしゃべりするのは最高ですね。ずっとそこにいたいくらいです」
"I go out and meet fans after every gig. It's important to make contact in real life and not just online in social media like Twitter. If you don't meet fans in real life too, then you're a fraud. If you're not comfortable getting into the sweat with them and talking with people at shows, then how can you do it successfully online? I love connecting with fans. Speaking to people at the merchandise table after the show is great. I can stay there forever."
「ソーシャルメディアなんか実際には役立たない」とか、「クラウドファンディングなんかいかさまだ」という人は人は沢山います。「やってもうまくゆくはずはない」という人も。
でも、アマンダは「ダメだ」という言葉に耳を傾けるかわりに、自分であれこれ工夫し、伴侶の有名作家ニール・ゲイマンや長年の友人とコラボして面白いアートを作ったりしています。
資金を提供してくれるファンが「与えて良かった」と感じてくれるようなものにすることを目指しているので、それらを実行するためにもお金と時間がかかっています。それについて説明するupdateもあります。
経費を払うとほとんどなくなってしまう百万ドルですが、クラウドファンディングの活動そのものが、アマンダをファンと近づけ、他のミュージシャンとは異なる特別な存在にしているのです。
追記
アマンダの新しいバンドのミュージックビデオです。
でも画像は「成人向け」ですから、ご注意を!
そうなんですよ!
そして、簡単にできることでもないんですよね。
クラウドファンディングというと、「お願いすれば集まるだろう」と軽く思っている人もいるわけですが、アマンダくらい努力しないとダメなんですよね。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2012年5 月31日 (木) 08:39
まさに、現在の(そしてこれからの)Grateful Deadですね。それにしても、いくらアメリカでも30日間で100万ドルはスゴイですね!まあ彼女は全く無名な新人ではなかったにせよ。。。
投稿情報: Inagakikenji | 2012年5 月31日 (木) 08:12