オバマ大統領のノーベル平和賞受賞スピーチを聴きながら、あれこれ思いました。(聞き逃した方はこちらをどうぞ)
ナチスドイツに対して交渉では平和は実現しなかったという「just war(正義の戦争。正当化される戦争)」の観念は理解できます。「平和」を願い、デモするだけでは平和を守ることは不可能です。
けれどもオバマ大統領のアフガン増派の決断は政治的なものだったと思います。もしアフガンから撤退して9/11のような悲劇が起こったら彼が目標にするgreater goodを成し遂げることはできません。私が彼の立場であったら撤退する勇気があったかどうかわかりません。それでも私はアフガニスタンからの撤退が正しい判断だったと思っています。アフガニスタンでの勝利というのはまずあり得ません。またnation buildingも無理です。経済的にも疲弊することがわかっています。そして、もちろん失われる人命が最大の問題です。
オバマ大統領がこのような決断を下さずにはいられなかった背景には、Party politics(党派政治)があります。彼が国のため世界のために実現しようとすることに対して、最近の共和党は、ラッシュ・リンボーやサラ・ペイリンのように「オバマ大統領は米国民ではない」、といったデマを鼓舞し、ティー・パーティのような過激なグループ(下記のYouTubeをごらんください)からの支持を歓迎しているところがあります。チェイニー元副大統領のように、日本の天皇に深々と頭を下げたのをここぞとばかりに"What I see in President Obama is somebody who bows before foreign leaders and spends his trips aboard primarily apologizing for U.S. behavior. I find that very upsetting."と批判して楽しむばかりで、一緒に米国の経済危機や世界平和のために働こうとしません。オバマ大統領の政策は決して左よりではなく、共感を覚える共和党員もいるはずなのですが、党の勢力に逆らうことは自分の政治生命にかかわるので党のリーダーに従うばかり。David BrooksやChristopher Hitchens、Lincoln Chafeeなどの昔ながらのfiscal responsibility(財政責任)を重視する保守派のジャーナリストや政治家たちは「本当の保守ではない」と非難される雰囲気があります。また、もっと深刻な傾向は、保守派に学歴や知識を批判するanti-intellectのムーブメントが広まっていることです。
民主党は共和党よりも党がまとまっていないので、かえって健全なところはあるのですが、それでも古い党のやり口で有能な政治家をつぶしたり、得票力を持っている団体を優先したり。
二大政党があることでバランスをとるのが理想なのですが、それがまったく機能せずに相手を潰すことしか考えていないようです。リンボーが「I hope Obama fails (オバマが失敗してくれればいい)」と過激なことを言っても、人気ラジオ番組の司会者を敵に回してまで批判しようとする保守派がいません。そんな番組ばかり聴く国民たちは、だんだん両極に分裂してゆきます。
オバマ大統領に「アフガン兵力増派」という決断をさせた背景にうんざりする私は、「いっそみんな無所属になってくれないか」と願うわけです。
オバマ大統領の医療制度改革に反対するティー・パーティの雰囲気です
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