最近アマゾン関係のEメールを相次いで受け取りました。
そのうちの一つが、Amazonの"Powered by Amazon"の新しい出版プログラムを初めて活用する「The Domino Project」です。
3月1日刊行の「The Domino Project」の第一弾は「Poke the Box 」。このGodinの新作は 、"Powered by Amazon"の最初のプロジェクトにふさわしく、「power of initiative and change(率先と変化のパワー)」について語るものだということです。詳しくはこちらの記者発表をどうぞ。
Godinは記者発表で次のように述べています。
"I'm thrilled to have the opportunity to break ground and help define what publishing can become," said Godin. "We all know that ideas that spread win, and this publishing house will enable my colleagues and I to create, write and spread ideas that matter. A book that isn't read doesn't do anyone any good, and too often, the book publishing industry gets in the way of books reaching people who can benefit from them. Amazon knows what to do to help these books get read."
アマゾンのもうひとつの新しいプロジェクトは、日本の「新人賞」によく似たAmazon Breakthrough Novel Awardです。Penguin Group (USA) と CreateSpaceの提携で行われるこの新人賞が画期的なのは、Amazon.comのトップレビューワーたちを「下読み」に使うというところです。
実は私のところにもお誘いが来ましたので、その内容をちょっと明かしますと、2.5週間で40作品を読んで、簡単なレビューとともにいくつかの評価するというものです(好奇心から引き受けることを考慮したのですが、忙しいのでやめました)。
このシステムの優れたところは、(礼金をアマゾンのギフト券で支払うから安上がりということは別として)、消費者であるレビューワーたちの「好き嫌い」の感覚を重視しているところです。文章を読むことを生業にしている「下読み」は、どうしても「文学性」なんてものを重視してしまいます。けれども一般消費者の共感を得ているAmazon.comのトップレビューワーたちの感覚は、直接「売れるかどうか」に連結しているわけです。彼らが「面白い」と選んだ最終候補作の中から優れたパネリストたちが選ぶので、受賞作は「文学的にも優れていて、売れる」ものになるというもくろみです。非常に賢いプランです。
アマゾンが出版業に乗り出したことは既によく知られています。
たとえば、Amazon Encoreは自費出版で読者の評価が高かったものをAmazonから改めて出版するもので、AmazonCrossingは海外の作品の翻訳権をアマゾン自身が購入して翻訳出版するものです。翻訳作品の選択に各国のアマゾンの売上ランキングと読者評価を利用しているところが優れています。
また、Kindleを使った自費出版Kindle Direct Publishing (KDP)、本、映画、音楽を自分で直接売れるCreateSpaceもあります。
こういう情報を提供すると、多くの方はそれぞれの詳細に興味をいだき、それを分析評価、あるいは真似ようとします。「あまり売れていない」「売れるだろう」「編集はどうするのだ?」「わが社でも同じことをしよう」..といった反応が想像できます。けれども、それは無駄な努力に終わることが多いと思います。
なぜなら、周囲がアマゾンの過去と現在を分析したり真似している間に、アマゾンは既に未来に歩みを進めているからです。
アマゾンは、誕生のときから「生き残るためには、reinvention(改革)を続けなければならない」ということを知っているのです。そしてなによりも、アマゾンは既に存在するものを模倣しようとはしません。常に「まだ存在しない新しいもの」を作り上げようとします。そこが最大の差です。
試みの中には失敗もあるでしょう。けれども、アマゾンは「こんなことをしても売れるわけはない」といったことを恐れてはいません。自分たちの「これは売れる」という感覚を大切にして突き進みます。それがKindleの成功です。また、「ひとつ失敗しても、他が成功すればよい」とどんどんいろいろなことを試みてゆきます。
そして何よりも、「消費者の視点」を忘れてはいません。
ですからアマゾンは今後もしばらくは「ひとり勝ち」するでしょう。
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