1ヶ月前に発売されたThe Last Train from Hiroshimaは、広島の原爆体験者と原爆を落としたエノラ・ゲイをエスコートした飛行士の証言から原爆の悲惨さをみごとに描いているという評判で、ジェイムズ・キャメロン監督の手で映画化されることにもなっていました。このままベストセラーになることが予想された大物のこの本に重要な問題があることが判明したのは最近のことです。
2月20日のニューヨークタイムズ紙の記事によると、原爆投下の技術的な詳細など本書にとって重要な情報を提供したJoseph Fuocoの証言がすべて偽りであったことはほぼ確実です。Fuocoは、著者のCharles Pellegrinoに自分がエノラ・ゲイをエスコートした二機の飛行機のひとつに乗っていたと伝えたようなのですが、彼が直前に交代したと主張するフライトエンジニアの James R. Corlissが実際に機上している証拠が残っており、歴史研究者や退役軍人たちもFuocoが偽物だと怒って抗議しているようです。FuocoもCorlissも既に死去していますが、記録からはFuocoが詐称をしていることは確かなようです。
その後、マクミランはデジタル版、ペーパーバック、海外翻訳版で訂正する意志を表明していましたが、 本日になり出版者のHenry Holt が、"The author of any work of non-fiction must stand behind its content. We must rely on our authors to answer questions that may arise as to the accuracy of their work and reliability of their sources. Unfortunately Mr. Pellegrino was not able to answer the additional questions that have arisen about his book to our satisfaction."と出版停止を発表しました(Publishers Weeklyより)。
せっかく米国人に原爆を考えさせる良書が発売されたと思ったのに残念なことです。映画はしっかりとした史実に基づいた脚本を作り、ぜひ完成させて欲しいと願います。
何があったのでしょうか。できあがった映画が楽しみでした。
投稿情報: Mario_jp | 2010年3 月 1日 (月) 19:55
・・・
投稿情報: Mario_jp | 2010年3 月 1日 (月) 19:55
著者のPellegrinoが情報源として頼っていたFuocoが実際には広島に飛んでおらず、原爆投下を目撃していないということがはっきりしたために、ノンフィクションとして全体的な信憑性がなくなってしまったわけです。そこでPublisherのHoltは出版を差し止めることにし、返品に応じると決めたわけですね。非常に重い決意だと思います。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2010年3 月 1日 (月) 20:20
米国在住者です。本書出版後に巻き起こった猛烈な批判と、圧力に屈した出版停止騒ぎを通じ、原爆投下の事実が、今も米国のタブーなのだと判りました。多くの一般市民を一瞬にして焼き殺したのですから、触れて欲しくない、むしろ歴史の闇に葬り去りたいのが、米国指導層の本音と思われます。
キャメロン監督による映像化が実現すれば、少数民族制圧と反抗を描いたアバター同様、大きな話題作となるでしょう。原爆投下が如何に非人道的であったか、多くの人々が知る機会となる筈です。
投稿情報: やす | 2010年3 月19日 (金) 09:50
こんにちは。
原爆投下に対して闇に葬り去りたいのは「米国指導者層」というよりも、同時テロの後でイラク戦争に賛成し、それに反対したフランスのバッシングをした連中と同じなのだと思います。ですから現在オバマ大統領を徹底的に叩いている人々と同じ層です。彼らは米国が過ちを認めるのは、弱みを晒すことと同様と考えているからですね。
だからこそ、この本ではそういう連中につけこまれないように徹底的に(間違いがないことを)調べておくべきだったと、残念でなりません。
けれども、自国の過去の過ちを認めないことが愛国心だと思っているのは米国人だけではありません。日本でも日本の軍隊がアジアで行ったことを否定し、それが愛国心だと思っている人がけっこういます。日本人がアジア侵略で被害者の心理を描いた映画を作るでしょうか?ありえませんね。米国は少なくとも原爆やベトナム戦争を批判する映画を沢山作っています。その差が私には恥ずかしいです。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2010年3 月20日 (土) 05:19