オバマ大統領就任をきっかけに、読むに耐えられないようなくだらない保守派の本がベストセラーになり始めたのは、これまで本を読まなかった人々が読書を始めたということなのでしょう。考えようによってはめでたいことです。
彼らが11月17日の発売を待ちきれずにAmazon.comに注文しているのが、共和党の副大統領候補だったSarah Palinの自称自伝のGoing Rogue(ゴーストライターに「私はね...」と話しただけでPalin本人は一字も自分で書いてはいない+真実よりも創作が多いと思われる回想)です。1ヶ月も前だというのに既にAmazon.comでトップに躍り出ています。
興味深いのは、この本がKindleほか電子書籍では販売されないということです。
TheBigMoney.comのWhy Gig Books Still Matterという記事によると、有名人の伝記はその人の強力なオーラを伝えるオブジェ、つまりtalisman(護符)としての価値が高いので、「読む」ことより「持つ」ことに意味があるらしいのです。電子書籍では読んでいるときに他人に見せびらかせないし、コーヒーテーブルの上に飾ることもできません。ですから本として買う人のほうが多いわけです。9.99ドルという廉価な電子書籍にしなくても十分売れることがわかっているから、出版社は強気で「紙媒体のみ!」と決断できるのです。
ところで冒頭で人々が「読書を始めた」と書きましたが、訂正する必要があります。護符として本を買っているのだとしたら、読む必要はないわけです。だいいちPalin本人は1字も自分で書いていないのですからね。まともな人ならゴーストライターの名前を(小さくても)表紙に出しますが、Palinの本にはそれが見当たりません。そうですね。護符ですから仕方ありません。
でも、ゴーストライターへの同情は無用です。Gawkerなどによると、Lynn Vincentは、これまでキリスト教保守派の福音主義に基づいたちょっとオツムの調子を疑うような記事を書いてきたジャーナリストらしいのです。この最強のチームが書いたGoing Rogueは、ノンフィクションではなくフィクション(パラノーマル・ロマンス)として読むとがぜん面白くなるかもしれません。
11月17日追記:本日発売されました。政策についての内容はほぼゼロで、副大統領候補としてキャンペーン中に作った敵リストを次々と攻撃してるようです。内容の信憑性についてマケイン元大統領候補の陣営からの反論が出ています。好奇心はありますが、彼女の収入に貢献したくないので新刊は絶対買わない姿勢です。中古が安く出るようになったら買うかもしれません。
10月7日お知らせ:世界のどこでも電子書籍を購入できる国際版のKindleが発売されました。
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