これからの不況の時代に売れる分野は、たぶん「経済」と現実逃避のための「娯楽作品」でしょう。
ということで、現在よく売れている経済関係の本ですが、それらは以下の二つの分野に分かれます。
A:現在と未来の国内外の経済状況を理解するための本
B:個人の経済状況を改善するハウツー本
まずは、
A:現在と未来の国内外の経済状況を理解するための本
1.Melt Down
先日ご紹介したこの本は、22日現在でアマゾン27位。この分野で最も売れている本です。読者評価も現在のところこの分野では最も良いようです。
2.When Giants Fall
これもMelt Downと同じく2月9日に発売されたもの。米国というジャイアンツが崩壊するとどうなるか、という未来を予測する内容。
作者はイギリスHSBC、ソロスファンド、オランダABNアムロ銀行、ドイツドレスナー銀行、アメリカJPモルガン・チェースなどで25年間勤務した投資専門家のマイケル・パンズナー。現在の金融崩壊が起こる前に著書Financial Armageddon(翻訳版「金融ハルマゲドン」)でそれを予告したことで知られています。けれども、両書とも、読者は狭い情報から結論を導きだしていることや表層的な分析を批判しているようです。Melt Downほど良い反応は得ていません。
3.The Return of Depression Economics and the Crisis of 2008
プリンストン大学の教授でノーベル賞受賞者のPaul Krugmanの最新作。2008年12月に発売されたものですが、現在でもベストセラーを続けています。通常の不況と恐慌での対応策の差などを説明したものです。90年代に日本が体験した不況についても分析しています。現在の恐慌への対応策については、それぞれの作家が非常に異なる提言をしていますので、1冊だけで判断することはできないでしょう。
4.Lords of Finance
これは現在の経済ではなく、過去の大恐慌を解説した作品です。世界銀行の元エコノミストでファンドマネジャーのLiaquat Ahamedが、ニューヨークのFederal ReserveのBenjamin Strong、 英国Bank of England のMontagu Norman、 仏国Banque de France のEmile Morceau、独国ReichsbankのHjalmer Schachtの4人の銀行家の決断がいかに大恐慌とそれに続く金融の混乱を引き起こし、それが第二次世界大戦に影響を及ぼしたかを語っています。
現在の不況が問題化する前に書かれた作品ですが、絶妙のタイミングで出版されました。タイムリーだというだけでなく、歴史ものとしてなかなか読み応えがある作品のようです。これはベストセラーのみならず、ロングセラーになる可能性があります。読者の評価も高いようです。
B:個人の経済状況を改善するハウツー本
1.Get Motivated!
タイトルどおり、やる気を奮起させるための本です。分かっていてもその気になれないのが人間の性。不況の時代だからこそ、こういう本が売れるのでしょう。
2.Suze Orman's 2009 Action Plan
スージー・オーマンの優れたところは、経済や金融にまったく無知な中流からワーキングクラスの人々の心理をよく理解しているところです。そして、彼らにできることを、彼らの言葉で語ることでしょう。毎年似たような本を何冊も出版していますが、それでも必ずベストセラーになるのは、どのような経済状況にあっても「ふつうの人々」が常に同じような過ちを繰り返すからです。これは現在の不況にあわせた行動プランです。
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