この2ヶ月ほどは過去数年でもたぶん「一番忙しい」と言って良いくらい多忙でした。
期限が短い翻訳作業で睡眠時間がもっと、もっと短いときはあったのですが、それは「翻訳」と「家事」の2つだけ覚えていれば良かったので脳みそ的には楽でした。でも、今回は、箇条書きにしてもたぶんいくつか抜けるほどいろんなことを平行してやっていたので、目が回るほどの忙しさ。実際にメニエール病のように眩暈で立てなくなることもありました。
その最中の7月に、私は3つのがん検診もこなしました。予約していたので仕方なかったのです。
ひとつは、子宮頸がんのスメア診、もうひとつは卵巣がんの超音波、そして一番めんどうな大腸内視鏡検査。乳がんの触診は検診のときに同時にしてもらいましたが、40歳になってから1年半から2年おきくらいに定期的にしているマンモグラフィーは去年の10月にすでに済ませています。
私は、「ラッキーに長生きしたら、遅かれ早かれ、誰でもなんらかのがんに罹ると考えたほうがよい」と思っています。細胞が老化してゆくのですから仕方ないのです。そういう観点から、早期発見のために検診をしているのです。
米国では50歳以上になると保険会社が大腸内視鏡検査の検査費を払ってくれます。ですから、50歳になった今年、私はさっさと受けることにしたのです。そうしたら、ポリープが2つ見つかりました。検査の時に除去してくれるので、一石二鳥です。家族性なので兄弟姉妹にも受診するように言われました。
なぜ米国では検診が盛んなのかというと、そのほうが保険会社にとってお金がかからないからです。つまり、後期に発見されると治療費がかかる。ですから予防対策しておくほうが保険会社にとっては得なのです。でもそれは、患者にとってもいえることですよね。お金だけでなく、生命的に。
私はかつてがん関係の医療製品を製造販売しているデンマークの会社に勤めていました。また、がん関係の書籍を翻訳したこともあります。それゆえ、がんの知識は、一般人よりもあるほうでしょう。けれども、それを一般人に伝えるのは非常に難しいと思ってきました。
ところが、中川恵一先生は、「がんのひみつ」(朝日出版社)で、ややこしいがんの話をとてもわかりやすく、語っておられます。
特に、私が関わった翻訳書にはない、「死なないつもりの日本人」の心理的な特徴をつかんだ語りが素晴らしいと思いました。“日本のがん医療では手術ばかり行われ、放射線治療が少ない、がんの症状緩和がまったく足りない、麻薬の使用量が極端に少ない"といった問題点の根幹に、“日本人の不死感がある”という指摘は当たっていると思います。「がんの話など聞きたくもない」というムードがあるのは、死なないつもりだから、という点もおおいに同感です。
もうひとつ同感なのは、緩和ケアについてです。
日本では、鎮痛剤がとても悪者扱いです。私もがまんしてしまうほうでした。けれども、がんの治療で「痛み」や「苦しみ」を軽減するほうが延命できるのは事実です。痛みや苦しみはそれだけでも命を縮めるのですから。
中川恵一先生の対談も読み応えがありますので、ぜひどうぞ。
「死なないつもり」でいる方は、きっと長生きしたいのでしょうから、かえってちゃんと心の準備しておいたほうが良いと思います。というわけで、おおいにおすすめの本です。
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