日経ネットによるとサントリーがついに青いバラの発売を始めるそうですね。
この記事を読んで、2001年に最相葉月さんが出版された「青いバラ」を思い出しました。
この中に遺伝子組み換えにより青いバラを作り出そうとするサントリーの試みも登場します。興味深いのは最相さんがこの後で「受精卵は人か否か」という生命科学技術に関するサイトを開設されたことです。
下記は最相さんによるサイトの説明です(サイトHPより抜粋)。
みなさまがご自身の意見を持つ前提として参考にしていただけるような情報をできるだけ公平な視点で交通整理し、提供しま す。生命科学技術はクローン人間や不妊治療、ヒトゲノムや遺伝子診断、再生医療等々、連日のようにメディアをにぎわせていますが、その内容や社会的意義を 理解するにはあまりにも高度な専門知識が必要です。
私はクローン羊ドリーの誕生以降、この分野の動向を追い続けてきましたが、最も痛感したのがそのわかりにくさでした。でも、こうした技術は本来、私たち の未来の生活を左右する、大変身近なものであるはずです。それなのにいったい何が今起こっていて何が問題なのかもわからないというのではそれこそ大問題で す。専門家は何を考え、国の方針はどうなのか、海外ではどうなっているのか、もっと視点を身近にひきよせて、ではあなたはどう考えるのか。
何かと早急に答えを求められることの多い生命科学技術ですが、あなたがあなた自身の考えを深めるための補助的役割を果たせれば幸いです。
私は2002年にクローンなどの生殖医療に疑問を覚えて「神たちの誤算」という小説を書きました。そして、その年からしばらくの間上記のサイトに寄稿するサポーターを務めさせていただき、最相さんだけでなく他のサポーターの方々とも生命科学倫理について意見を交わす機会に恵まれました。そのとき感じたのは、たったこれだけの人数でも意見が一致することがないという事実です。それなのに、現実社会ではきちんとした対話なしにどんどん技術だけが先に進んでいるのです。
「バラくらいいいじゃないか」と思われるかもしれません。
でも、Margaret Atwoodのディストピア小説「Oryx and Crake」やその続編「The Year of the Flood」をお読みになると、遺伝子組み換えの恐ろしさを感じるかもしれません(これらの小説は近日中に洋書ファンクラブのほうでご紹介する予定です)。
このニュース、日本でも話題になってます。新聞の投稿欄に「青い薔薇なんて、怖ろしい。ここまで人間が手を出していいのか。技術が可能だとしても、理解できない」という主旨の事が書かれていて・・・。
むか~~し読んだミステリーで、最新の植物を開発していた人が、何かの遺伝子の関係で、怖ろしい花を作ってしまい・・・美しさに迷ってその花を手にした人が、次々と死んでいく・・・・って言う話を思い出し、そして、先輩の
書かれた「神たちの誤算」も!
勿論思い出しました。
今度また読みなおしてみようと思います。
青い薔薇・・・必要なのでしょうか?私は・・・疑問です。
そのすぐ後に、日本で母親が娘の子供を出産したという、顔を見せた記者会見が有り…これも考えさせられました。気持ちは分かるのですが・・・もしも、母親が娘の子を妊娠中に何か起こって母体そのものの命が危うくなったら・・・どうするのだろう?と考えずにはいられませんでした。
投稿情報: 羽尻美紀 | 2009年12 月 3日 (木) 18:58
うわ〜!最相さんお久しぶりです!ときどきネットで最相さんのご活躍を拝見するたびに、「どうしていらっしゃるのかな?」と懐かしく思っていました。
それにしても「青いバラ」が絶版だなんて、信じられません。米国ならここぞとばかりに増刷して宣伝するところですのに!Twitterで昨日大騒ぎしたときの反応では、読みたいと思った方が多いようです。
こういうことがあるから、やはり電子書籍やオンデマンドの普及が必要だと思います。
こちらのブログでは和書もご紹介しておりますが、普段は雑感を書き留める日記のようなもので、最近は洋書ニュース( http://watanabeyukari.weblogs.jp/youshonews/ )と洋書ファンクラブ( http://watanabeyukari.weblogs.jp/yousho/ )を中心に洋書のご紹介をしています。いろいろご意見などをお伺いできれば嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願いします
投稿情報: 渡辺 | 2009年10 月21日 (水) 05:18
渡辺さん、お久しぶりです。こんなブログされていたんですね!
青いバラのニュースで拙著を思い出していただいたなんて本当にありがとうございます。残念ながら先月、この文庫は絶版にされてしまい、古本でしか入手できなくなってしまいました。なにもサントリーの発表直前に発売中止しなくても~(涙)。今こそ読んでいただきたいのに、出版社の論理はまったく違うところにあるようです。
はちこ様、ホームページを御覧いただけたとのこと心から御礼申し上げます。渡辺さん始めさまざまな分野の方の力の入った文章が詰まっているので、サイトはすでに更新終了したのですが、ネット上には残しております。こうして後で知ってくださる方がおられると嬉しいです。
渡辺さん、ブログこれからも時々拝読しますね。本当にありがとうございました。ではでは。
投稿情報: さいしょう | 2009年10 月20日 (火) 22:48
おお、そう言っていただけてとても嬉しいです!
ご紹介のサイトも早速覗かせていただき、日本にもこういう活動をされている方がおられたのか!と唸りました。興味深い記事がたくさんあり、これからぜひ学ばせていただきたいと思いました。
私自身は自然科学はからきしダメなので、そちらは夫にまかせています。汗(『ゲノムと聖書』も夫との共訳です。)
さっそくお送りさせていただきますので、メールでご住所をお知らせいただけますか?
投稿情報: はちこ | 2009年10 月20日 (火) 14:43
こんにちは。
すごいベストセラーを翻訳されたのですね。そういうお仕事をされていて羨ましい!
それだけ両方の分野の知識が豊富だということで、はちこさんは出版社にとって大切な存在なのでしょうね。
無宗教を含め、ふだんいろいろな宗教の方とつきあっているので、物事には異なる視点があるということを実感しています。「受精卵は人か否か」では宗教学者や元牧師さんの真摯なご意見をお聞きする機会があり、なるほどと感じることがありました。宗教と科学の関係はいろいろな意味で大切なことだと思っています。
私自身は既成の宗教に属さないことを主義としていますが、魂や個人を超えた目に見えないものの存在は非常に重要だと思っています。また、人類が欲望のままに好き勝手なことをしてはならないとも強く感じています。
Atwoodの小説は、必ず落ち込みますが、いろいろと考えさせてくれます。早くレビュー書かなくちゃと思っていますがなかなか(苦笑)。
はちこさんが翻訳された『ゲノムと聖書』にはとっても興味があります。ブログでもぜひご紹介させていただきたいです。
投稿情報: 渡辺 | 2009年10 月20日 (火) 14:25
私は、現在NIHのnational directorをしているフランシス・コリンズが書いた本Language of God(『ゲノムと聖書』 NTT出版)を翻訳しました。内容は、彼のようなrigorous scientistがなぜ神を信じるに至ったかを綴ったものですが、巻末に補遺として、生命・医療倫理に関する問題提起をしています。
この分野では、渡辺さんがおっしゃるように、きちんとした対話なしに、ただ技術だけがどんどん進んでおり、恐ろしいほどですね。
コリンズ博士は、いろいろな分野の人たちが対話をすることの重要性、必要性を訴えています。彼は医師として、科学者として、また信仰者として、とてもバランスの取れた考えの持ち主なので、こういう人がNIHのヘッドになってくれて良かったと思っています。
ただ技術進歩を追い求めたい人、それでお金儲けをしたい人、自分の信念・信条を唯一絶対としてそれだけをしゃにむに押し通したい人、いろいろな人がいます。何かcheesyな表現で恐縮ですが、人々が人類全体の益を考えつつ、誠実な対話のものでこういった問題が取り扱われていくことを願います。
最近渡辺さんがよくおっしゃっていたAtwoodの小説は、遺伝子組み換えに関するものだったのですね。読んでみたいと思います。
いつも有益な情報をありがとうございます!
『ゲノムと聖書』は、私の手元に何冊か余っています。もしご興味がおありでしたら、送らせていただきますので(レビューしてくださいとかということではなく!)ご連絡ください。
投稿情報: はちこ | 2009年10 月20日 (火) 11:04